科学史・科学哲学の碩学である村上陽一郎氏の「教養論」。村上氏の硬い文体とは異なる軽妙な語り口に違和感を感じながら読んでいたが、「あとがき」を読んで合点がいった。本書は語りを文章化したものなのだ。
本書で「規矩」という言葉を初めて知った。
「規」とはコンパスのことであり、「矩」とはさしがねのことである。ゆえに「規矩」とはコンパスとさしがねのことになるが、転じて「基準」の意味を持つ。
自分を律する基準、自分の行動を律する基準のことを規矩と言うが、村上氏が「規矩」と言うとき、それはより深い意味を持つ。
慎み深く生きること、恥ずかしくない行動をとること、分別を弁えること。こういった意味を込めて村上氏は「規矩を持つことが教養である」と説く。
教養とは世界における自分の位置を知ることである。そして、自分の中に規矩を持って生きることである。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
読書
- 感想投稿日 : 2020年10月16日
- 読了日 : 2020年10月16日
- 本棚登録日 : 2020年10月16日
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