第140回芥川賞受賞作
なんだろう、題名はポトスだし、表紙は爽やかだし。
苦しい中でも淡々とし、安定しているような主人公の日常で、(「今が一番の働き盛り」の入れ墨を入れたいなと思っている時点で、安定ではないのか。)こういう描写が連綿と続く本なのかなと、油断していた。
「ポトスライムの舟」と「十二月の窓辺」という短編二話からなる不思議な構成。
主人公は違うけれども、同一とも感じられる。
人がしんどい毎日を生きるのに、空想上でも逃避する世界が必要だ。
ここまでやったら、こうするぞーっていう。
やる、やらないは別でも目標があるのは、毎日を頑張る糧になる。
この本は、なんとはなしの日常(二話目はなんとはなしではないな)なんだけど、ちょっとしたことで、毎日がつながる。つながっていく。
やはり寄る辺ない日常を生き抜く、働く人への応援歌なのかな。
ユーモラスさもあって、最後解説を読むと分かる、あるカラクリによって、不思議な視点から読んでいたことに気づく。
二話目の読後感がこれまたすごくて。
しばらくたゆたってしまった。
津村記久子さんは、はじめて読んだけれど、
他の作品も読んでみたい。
主人公の最後の思いに、結局やっぱりそこが大事になるんだなと思った。
ネタバレがっつりありの、感想・考察を書きたくなってしまい、再読記録に書いてしまった。まだ読んでいない方は先ずは、何の前情報もなく読むのをおすすめします。
再読記録を書いたら、この表紙の意味、爽やかさもなんだかわかった気がした。いい本だった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2024年1月27日
- 読了日 : 2024年1月26日
- 本棚登録日 : 2024年1月24日
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