若松英輔さん、2冊目。若松さんの本をテレビで紹介されるのを聞くと、毎回とても絶賛されていて、尊いことが書かれてあるのだろうと自ずと期待が膨らんだ。
レビューもとても高評価ばかりなので、私の読解力が乏しいだけなのかもしれないけれど、想像していたほどには、私には響かなかった。大学の文学部の先生が書きそうな内容だな、とか、仏文学部に在籍していた大学時代、私もこういう感覚を大切にして、こういう観念的な文章を書いていたなと感じた。
全体を通してかなり観念的で、一見○○だが実は…だ、のようなパラドクス的な考え方、とか、実際には触れられない、見えないものなどを心の深いところで見つめ感じることが生きる意味であり喜びだ、という考え方がしばしば書かれていた。
薬草を扱う商いをしているということで、東洋的な感覚を突き詰めていることに合点がいった。
25の生きていくうえでかけがえのないことについて書かれているが、中でも「老いる」「耐える」「憎む」が良かった。
心に残った文…
○今に生きることなく過去、あるいは未来どちらかに大きく傾いている状態を不幸と呼ぶのかもしれない。74
○耐えるとは、人生が差し出すいくつかの逃れることのできない問いを、明確な答えのないまま、どこまでも愛そうとすることだ。99
○人はどんなに他の人を嫌いになっても構わない。しかし、決して憎んではならない。それはついに自らを傷つけることになる。114
○愛してその悪(短所)を知り、憎みてその善(長所)を知る115
今の自分は心が擦りきれすぎていて、若松さんの文が、きちんと読めていない可能性もあるなと自省した。
悲しみがなければ得られないことがある、と若松さんは一貫して訴えている。自分がよくベートーヴェンの音楽の表現について、「厳しさがなければ本当の優しさは出てこないのよ」なんてわかったふうに生徒さんに伝えていることは、これに少し似ているのかもしれない。
- 感想投稿日 : 2022年12月18日
- 読了日 : 2022年12月18日
- 本棚登録日 : 2022年11月26日
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