明子はそれを見て、不覚にも涙がこぼれた。社会の第一線で女が働くということは、ああいうことなのだ。結婚していようがいまいが、男 がいようがいまいが、何もかも自分で引き受けることなのだ。あの女にもいろいろなことがあるのだろう。しかし、帯をバシッと 一つ 叩いて気合を入れて、何事もないかのように華やいで客と接するに違いあるまい。 明子はあの日から出勤前にスーツの腰をバシッと叩くことが 儀式になっていた。
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- 感想投稿日 : 2023年4月7日
- 読了日 : 2023年4月7日
- 本棚登録日 : 2023年4月7日
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