南京事件はあったのか。30万人もの市民が日本人兵士によって虐殺されたのか。日中間で多くの議論を巻き起こし、どんな結果が出ようとも、左右どちらかから必ず批判されるであろう歴史問題だ。
著名なジャーナリストであれば、深入りしても得にはならないことはわかっている。そんな事件を現代犯罪報道で数々の実績をあげた著者が挑む。なんともリスキーな行動だが、警察も裁判所も信じず、殺人事件の冤罪を証明した著者にすれば、あやふやな事実は許せないのだろう。
そして、著者の取材方法は南京事件でも現代犯罪でも変わらない。一つの事象を様々な方向から検証して、裏を取り、「事実」と認定する。そこにあるのは「だまされない」という著者の決意だ。
南京事件について書かれている市民の日記があれば、原本を確認して、その内容に矛盾がないか他の文献で裏を取る。こうして積み上げた事実による著者の結論は「南京事件はあった」。
さらに彼の疑問は続く。南京事件を見ていない人に取材して、「南京事件はなかった」という報道に意味はあるのか、と。結局、南京事件報道とはイデオロギーや国益、ナショナリズム、ジャーナリズムがごちゃ混ぜになって生み出された「踏み絵」なんだろう。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2017年8月29日
- 読了日 : 2017年8月29日
- 本棚登録日 : 2017年8月29日
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