大正12年9月1日正午に起こった大地震での死者は約20万人。その多くは地震による直接被害よりもその後の火災や逃走中の事故によるもの。
中でも悲惨なのが、2万坪の空き地である被服廠跡地での災害。広大な空き地は絶好の避難地として、多くの人々が大量の荷物を抱えて逃げ込んでくるが、そこに巨大な竜巻が発生し、人間や荷物を吹き飛ばす。さらに火災が引火。足の踏み場もないほどに集まっていた群衆は逃げることも容易ならず、死者は38千名。
著者はその現場で数少ない生存者たちへ取材し、その地獄絵を明らかにする。折り重なった死体を踏み越えて逃げる群衆。踏みつけられた死体から内臓がはみ出す。転倒したために生きたまま踏みつぶされた死体も。人間が意外と燃えやすいことを知ったという生存者の言葉が印象的だ。
さらに情報網が遮断され、人々の不安定な精神から様々な流言が放たれたのもこの地震の特徴。朝鮮人が暴動を起こす。次なる大地震が発生する。などのデマを民衆だけじゃなく、取材力を失った新聞社までもが鵜呑みにしてしまう。混乱した人間の集団心理がいかに不確実なものなのかがよくわかる。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史モノ
- 感想投稿日 : 2012年7月14日
- 読了日 : 2012年7月14日
- 本棚登録日 : 2012年7月14日
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