定価のない本

著者 :
  • 東京創元社 (2019年9月20日発売)
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東京の神田神保町。今も昔も多くの古書店が立ち並ぶ古本の町。戦後すぐの頃、そんな神保町で書店経営者が大量の本の下敷きになって死亡する。近所に住む同業者の琴岡庄治は事故ではないと直感し、犯人探しに奮闘する。やがて、事件の裏にはGHQが存在していることが明るみになる。

「本」にはその国の歴史や文化を後世に伝える役割がある。それを知る神田の古書店は、関東大震災や空襲に負けることなく、日本人のために本を守ろうとした。が、彼らにも生活がある。いくら自分の国のためといえど、ボランティアで本を守ることはできない。そこで古書店は古本に適正な価格を付けて、市場に流通させて、利益を得る。そんな資本主義ルールによる流通過程の中で貴重な本は生き残ったのだ。

結果的に、古本市場は日本人のアイデンティティを残す役割を果たした。しかし、敗戦をきっかけに日本人を変えてしまいたい米国にとって、古本市場の存在は都合が悪い。かくして、神保町古書店たちとGHQとの日本文化をめぐる争いが開戦する。

そんな社会派ミステリー歴史小説だが、ミステリー部分がパッとしない。徳富蘇峰や太宰治、主人公の息子など、意味ありげに登場する割には活躍しない人物たちが展開を邪魔しているのが残念。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 雑学
感想投稿日 : 2020年7月20日
読了日 : 2020年7月20日
本棚登録日 : 2020年7月20日

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