凄まじい悪意の残骸に対峙する刑事や鑑識。
実にタフで強靭な精神力を持っているのだろう。
死後、何日もたった死体、殺され、切り刻まれた死体、そんな事件の一つ一つに相対するうち、自らが壊れ、バラバラになりはしないだろうか。
それを持ちこたえるには、慣れか、心に蓋をすることか…。
ソレハサテオキ。
八王子西署で猟奇犯罪を追う藤堂比奈子、東海林刑事、
厚田警部補、三木鑑識捜査官、そして「死神」と異名をとる検視官、石上妙子。メンバーの顔触れはいつもの通り、そしていつもの面々に会えてうれしいワ。
今回、彼らが追うのは「自殺」。
車の中で腐敗し、爆発した自殺体。首吊り後、腐って首が落ちてしまった死体。
自殺と処理された事件をきっかけに、ネットの自殺ほう助サイトが浮かび上がってくる。
自殺念慮にとらわれた人々がまき散らす負のオーラを浴びながら、比奈子は「それでも、生きて!」と叫ぶ。
街の真ん中で、自殺志願者の女性にしがみつき、
「この人死ぬって!そんなのダメ!誰か助けて!」と大声を出す。
そんなまっすぐな必死さを見せても、死に囚われた人の心は救えないのだろうか。
死にたいという人に、どんな言葉をかけられるのだろうか。
周囲の言葉や感情から目をそらす人をこちらに向かせるには、どうしたらいいのだろうか。
なんの答えも出せない中で、
死神女史が語る、楽に死ねる自殺なんてない、「眠るように死にたかったら天寿をまっとうするしかないんだよ…自然に身体が衰えて死んでいく場合はたぶん、苦しくもなんともないと思うんだよ。生々しい命を無理に終わらそうと思ったら、楽になんか死ねるわけがないよ」という言葉が深くしみこんでいく。
個性派ぞろいの面々だが、さらに、三木捜査官を慕う西園寺麗華のキャラがすごくいい。
大好きだ。
- 感想投稿日 : 2018年3月3日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2018年3月3日
みんなの感想をみる