AID 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2015年8月25日発売)
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凄まじい悪意の残骸に対峙する刑事や鑑識。

実にタフで強靭な精神力を持っているのだろう。

死後、何日もたった死体、殺され、切り刻まれた死体、そんな事件の一つ一つに相対するうち、自らが壊れ、バラバラになりはしないだろうか。

それを持ちこたえるには、慣れか、心に蓋をすることか…。

ソレハサテオキ。

八王子西署で猟奇犯罪を追う藤堂比奈子、東海林刑事、
厚田警部補、三木鑑識捜査官、そして「死神」と異名をとる検視官、石上妙子。メンバーの顔触れはいつもの通り、そしていつもの面々に会えてうれしいワ。

今回、彼らが追うのは「自殺」。

車の中で腐敗し、爆発した自殺体。首吊り後、腐って首が落ちてしまった死体。

自殺と処理された事件をきっかけに、ネットの自殺ほう助サイトが浮かび上がってくる。

自殺念慮にとらわれた人々がまき散らす負のオーラを浴びながら、比奈子は「それでも、生きて!」と叫ぶ。

街の真ん中で、自殺志願者の女性にしがみつき、
「この人死ぬって!そんなのダメ!誰か助けて!」と大声を出す。

そんなまっすぐな必死さを見せても、死に囚われた人の心は救えないのだろうか。

死にたいという人に、どんな言葉をかけられるのだろうか。

周囲の言葉や感情から目をそらす人をこちらに向かせるには、どうしたらいいのだろうか。

なんの答えも出せない中で、

死神女史が語る、楽に死ねる自殺なんてない、「眠るように死にたかったら天寿をまっとうするしかないんだよ…自然に身体が衰えて死んでいく場合はたぶん、苦しくもなんともないと思うんだよ。生々しい命を無理に終わらそうと思ったら、楽になんか死ねるわけがないよ」という言葉が深くしみこんでいく。

個性派ぞろいの面々だが、さらに、三木捜査官を慕う西園寺麗華のキャラがすごくいい。

大好きだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 警察小説
感想投稿日 : 2018年3月3日
読了日 : -
本棚登録日 : 2018年3月3日

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