日の名残り (ハヤカワepi文庫 イ 1-1)

  • 早川書房 (2001年5月31日発売)
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過ぎ去った日々に思いをはせる、夢をもう一度見る。イギリスの執事を取り上げている。伝統があるが、現代にはそぐわない感じもする。また、今の時代にどのようにして仕事を続けていくのか?本書では「品格」という言葉で表現している。時代は大戦の前後、旧貴族の生活が大きく変化をした時代背景。ダーリントンホール。卿の裏方としての活躍、世界にどれだけ影響を与えたかは良く分からず。ミスター・スティーブンスの執事として使命は主人に尽くすこと、それが品格であると語られる。屋敷を切り盛り、維持すること、主人の命令には忠実であること。執事として、自分を出してはいけない。感情というものを持たない。父に対しては尊敬、死にもあえず。ミス・ケントン、女中頭、仕事は有能である。感情はある。執事に対して、愛情を持つと思われる。30を境にして、結婚することを選ぶ。旧家屋敷をアメリカ人が購入。主人が米国に帰国する時、執事は1週間、休暇を取り、ミス・ケントン(ミセス・ベン)を尋ねる旅行をする。旅行時の回想で、日々が語られる。1人称の語りであるが、ミス・ケントンの愛が感じられる。執事は、この愛を感じ取っていたのだろうか?愛を感じつつも、品格を優先したと考えるべきか?それは最後に示されている。執事はダーリントンホールとともに役目を終えた。品格を伝統を紳士を守るために、愛することをしなかった。そして今は、家敷と伝統を米国人に買われた。自由を重んじる国に売られた。自分を見ていた。それは過ぎ去りし日々の自分であった。後悔はしない、名残なのだ。

書かれた時代背景で、イギリスの斜陽時代か?
男と女の対比であるが、仕事に生きるか生活に生きるかの対比としても受け取れる。それは性の違いとしても描かれる。
名残、自分を許すこと?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史文化
感想投稿日 : 2013年1月6日
読了日 : 2012年9月7日
本棚登録日 : 2012年8月24日

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