夜の公園 (中公文庫 か 57-5)

著者 :
  • 中央公論新社 (2009年4月1日発売)
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本棚登録 : 1177
感想 : 115
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 章ごとに、リリ、幸夫、春名、暁と視点が移っていき、お互いが緩く関わり合いながらそれぞれの生活や将来を変化させていく話。
 全体を通して大きく視点が二周しており、一周目では四人全員の浮気現場がバレる同じ事件についてのそれぞれの視点だったが、二周目ではリリが離婚を決めたことを発端に章が進むごとに時間も進んでいっており、とても面白かった。物語の登場人物は、皆どこか自分の居場所に悩んでおり、どうしてここにいるかも分からないけど、それでも何かしらを求めて生きていく。薄暗く少しでも遠くにいる相手の顔などほとんど見えないが、近くを通り過ぎたり一緒に歩く時にはちょっとは、はっきりして見え、それでも離れれば分からなくなる最初に描写された「夜の公園」の散歩が、そのままこの小説のテーマなのかなと思った。
 文章に関しては章の登場人物ごとにイメージを変えており、春名は軽く幸夫はどろっとしているという風な印象を受けた。だからこそ川上弘美らしさを文章全体から感じることは少なかった。また、描写が素晴らしく、特にリリの妊娠が発覚した時やその後の決意の描写が好きだった。ただ、純文学なのでつっこむ方が野暮なのかもしれないが、最初の暁のナンパに乗るリリのシーンで、お互いの考えや心情などが全く分からず、動機が薄いように感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年11月20日
読了日 : 2022年11月20日
本棚登録日 : 2022年11月20日

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