アシュリー事件: メディカル・コントロールと新・優生思想の時代

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  • 生活書院 (2011年10月1日発売)
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アシュリーという名の子どもがいる。彼女は身体が成長しても、精神面は生後3ヶ月のまま成長できない、という障害を持って生まれてきた。だからアシュリーをピロー・エンジェルと呼ぶ人もいる。枕と友だちで、赤ん坊の無垢な心を持ち続けるから、と。

アシュリーの両親はある決断をした。アシュリーの子宮と卵管を摘出して、乳房が大きくならないようにするための手術をしたのだ。

昔、ハンセン病患者に対して社会が犯した過ちを、自分の子どもに対してする人がいるなんて、信じられない。愛情からした決断だから許されるのか?こんなのは人権侵害だ。私が障害を持つ人のことをぜんぜん知らないからそう思うだけ?健康な身体にメスを入れて内臓を取り出すのは暴力だよ。

同じ様なことをくり返さないためには地域社会の協力が必要とか、そういうレベルの話じゃない。アシュリーの手術に関わった人達には、彼女を「人間」として見る視点が欠けている。

意思疎通もままならない障害を持つ人の権利を守るにはどうしたらいいのか。自分の血縁者にそういう人がいなければ、誰だって自分のことに手一杯で、そんなことまで考えていられない。障害を持つ人が暮らしやすい社会は、そうでない人にとっても暮らしやすいのは分かっている。でも、そのためにどうしたらいいの?

脳で思っていること、考えていることを画面に映しだせる機械を開発しているチームがあるってTVで見たことがある。未來にそれが実用化して、直接意志を伝えられない人の助けになってくれたら。くれたら……なんだろう?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2011年10月30日
読了日 : 2011年10月30日
本棚登録日 : 2011年10月30日

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