長ぐつをはいたねこ

  • 童話館出版 (2006年3月1日発売)
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感想 : 7
5

私たちの世代にとって『長靴をはいた猫』と言えば、「びっくりしたニャ」の東映アニメーションのやつ。
今回、この絵本を手に取る機会があり、改めてアニメーションの方(1969年東映まんがまつりのもの)もあわせて見てみた。
意外と二者で共通する点があって驚いた。絵本によるペローの原作と、アニメとの共通点を気づいたままに挙げてみる。
(1) 3人の息子が親の遺産を引き継ぐが、末の息子だけが損な立場になっている。
(2) 猫が知恵をきかせて王様による接見が実現し、末の息子のことを「カラバ侯爵」だと紹介する。
(3) 王様が王女と領内を視察して川のほとりを通るのを猫が先に知り、末の息子に服をすべて脱いで川の中にいるように言う。
そして通りかかった王様に猫が「カラバ侯爵が川で水浴び中に服を盗まれました」と進言し、王族ご用達の服を調達する。
(4) 猫が農民たちに、王様が通った際には『ここはカラバ侯爵の土地です』というように仕向ける。
(5) 猫が人喰い鬼の所へ行き、知恵を効かせて鬼を大きな生き物と小さな生き物とに姿を変えさせる。小さな生き物に変化した鬼を成敗する。

ストーリーは、自分の出生や貧乏といった逆境を、猫のアイデアでひっくり返すところに面白さがあるが、アイデアと言ってもそんな大仰なもんじゃなくて、いわばコロンブスの卵的な発想。
そもそも、猫に長靴(ブーツ)をはかせるという発想が奇抜。でも奇抜だけどギリギリで珍奇じゃない。
そこをこの絵本では、ウォルター・クレインの絵が如実に示している。

東映アニメのペロは、顔は猫で体つきは完全に人間。いわば見た目は「猫の着ぐるみ」。
また、ドリームワークスの映画作品では、猫の体毛や肉付きは残しているが、直立二足歩行であり、その点では人間化されている。
しかしクレインが描く猫は、背中が曲線を描く本物の猫のシルエットを保ち、その猫にブーツを履かせている。いわば、本物の猫によるブーツ姿。猫が猫の姿のままで、ブーツを履き、歩き、走っている。
それが自然な姿として矛盾なく描かれているところに、クレインの画家としての挑戦がうかがえ、この本の価値を高めている。

一方で、文・絵ともに子どもの嗜好にまで“降りてきていない”ので、子どもにすると「難しい」「とっつきにくい」本なのかもしれない。
でも私は子どもに対して、大人側で勝手に噛み砕くような“へりくだった”態度で絵本を読ませるのが嫌いなので、まずは子どもにそのまま読ませる→それで子どもの反応を確かめる→難しいという子どもの感想を得る、この一連の流れ自体が大事だと思っている。
すでに評価の定まった絵本での“安住”に満足できない親御さんは、この本での読み聞かせに“挑戦”してみてください。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年2月4日
読了日 : 2018年2月4日
本棚登録日 : 2018年2月4日

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