死んだ恋人は奥さんの元に戻り、わたしはひとりぼっちで
さびしい思いをしていると、夢に恋人が現れる
「翼」
写真を渡すために友達の元を訪れると、
離婚した夫(わたしが昔好きだった)に直接渡してほしいと頼まれる
「歳月」
夫と離婚し、不倫相手と一緒に過ごしながら
いずれはこの男も失うのだと感じる
「白い花のような月」
別れた彼女から一緒に飼っていた猫の骨壺を預けられ、
そこにキスをしているところを今の彼女に見られる
「猫壺」
雨のバーで、離婚後に死んだ父を看取りに来た母が
顔中にキスの雨を降らせていたことをひとり語る
「夜噺」
夫と義父、義従弟と一緒に暮らしていた家に立ち寄り
当時の自分の不貞に思いをはせる
「廃墟」
彼がリフォームしてくれた青い三角屋根の別荘で
これから別れ話をされるのだろう
「蒼いトマト」
異動してきた課長の歯に惹かれ、
社員旅行の帰りに車で送ってもらう
「ラプソディ」
別れた夫に呪われながら彼の友達と結婚するが
経営不振に陥り心中し、未だに成仏できずにいる
「オンブラ・マイ・フ」
装画:柄澤齊 装丁:新潮社装丁室
不倫や離婚をベースとしたほろにがい恋愛短編集。
「ラプソディ」の歯に焦がれる描写がいいです。
「チーズバーガーを食べている彼の舌先が、時々、歯の表面を撫でていく。笑うたびに、また、白いアーチを描いた歯が見える。美しく猛々しい、小さなギロチンのような歯である。」
性的であり、残酷であり、こちらの想像をかきたてるような。
最初と最後の話は少し現実から離れた視点なのが
ホラー作家としての小池さんを思い出させます。
- 感想投稿日 : 2011年3月27日
- 読了日 : 2011年3月27日
- 本棚登録日 : 2011年3月27日
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