可士和式

  • 天野祐吉作業室 (2010年12月1日発売)
3.65
  • (3)
  • (6)
  • (7)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 91
感想 : 6

広告批評の天野祐吉さんと、アートディレクターの佐藤可士和さんの対談本。

以下メモ。
●企業がいいたいことは、100%理解するまでヒアリングして。でもね、最初に何にも聞かなかった時に感じたことも、ずっと忘れないようにしてます。だから、たとえばこういう商品があって、まず最初は「何だこれ?」と思うわけですよ。よくわかんないけど、こういうもんだろうなって思った印象をね、しっかり覚えておく。で、そのあとでいろいろ話を聞くと、これひとつにいろんなことをやっているわけですね。そのギャップが、大切なんです。つまり、いろんな工夫や努力をしているのに、ぜんぜん伝わっていないということがわかって、じゃあ何がどうして伝わってないのかって考えていく。そうやって思考や情報を整理して行くと自ずと何をすべきかが見えてくるんです。
●なぜか大学は、企業もそうですが、自分のことを言葉で説明しようとするんですね。当学の建学精神はなんとかかんとかなんて、もちろんそういうことも大事ですが、それだけではもうひとつ、わからないんですね。恋人や結婚相手を選ぶときだってそうでしょう。どこの出身で、どこどこの学校を出て、身長と体重はこれこれで、なんて、言葉だけで恋人や結婚相手は選べない。最後は言葉以外のその人の外見とか、ふんい気とか、つまり見える全体ね、それで選んでいるに違いない。
●いまは大学を選ぶ基準が偏差値以外になさすぎる。いまの若い人は、ただひたすら偏差値や成績のいいものから順番に入る。そんなバカな学校選びをさせられている学生はかわいそうだと思うんです。だから明学なら明学で、「うちに来る人はこういう人だ」と選びやすい軸を出してあげるのが、学生にとって一番大切なことなんじゃないか。
●自分はおもしろくないけど、いまはこういうものが売れそうだということでやりだすと、どんどん変な方向へ行ってしまう。
●現実のありのままを描くだけではなく、あってほしいものも含めて表現する。
●広告というのは、一種の批評的表現だとぼくは思ってるんですね。もちろんそれは、販売のための告知であり、人の欲望を引き起こすための手段でもあるんだけど、最終的にはね、あなたの生活っておかしくありませんか、こんな常識にとらわれていていいんですか、という風な批評の役割を持っている。
●たとえばパリっていうとすぐに凱旋門っていう風に思うのはすごい想像力が貧困じゃないですか。パリにだってもっと他に庶民の生活があったりする。だけど凱旋門やエッフェル塔くらいしか想像できない。そういう風にしかパリを見ない人のパリのイメージは歪んでいるわけで、それをそうじゃないんだと戻す力、気づかせる力のことを想像力だというんです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年8月29日
読了日 : 2012年8月22日
本棚登録日 : 2012年8月19日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする