香菜里屋を知っていますか

著者 :
  • 講談社 (2007年11月29日発売)
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本棚登録 : 434
感想 : 87
4

三軒茶屋の路地にある、一軒のビアバー香菜里屋。
そこには、4種類のビールと
いつも素晴らしい料理と空間を提供してくれる
マスターの工藤がいる。

北森さんの作品に触れるきっかけとなった
香菜里屋シリーズ。

第4弾にして、最終巻。


あぁ。
終わっちゃった。

本当に寂しい。
このシリーズ、大好きでした。
あたし、本当に大好きでした。

だって、もうこの表紙からたまりません。
きっと香菜里屋の
サーバーとカウンターはこんな感じなんでしょう。

作品全体に漂う空気とか、
料理の描写なんて、、もう、本当に。

ジブリの料理より美味しそうだもの。苦笑


バーマンの最後の幕引きの謎「ラストマティーニ」
女友達の出発を描く「プレジール」
子ども時代のいたずらが今へと繋がる「背表紙の友」
香菜里屋の屋号の由来と閉店を描く「終幕の風景」
そして、本書書き下ろしの「香菜里屋を知っていますか」

前作までは、
切ない感覚が物語の登場人物たちに漂っていましたが
今作は「終わり」をファクターに前に進んでいきます。

香菜里屋に訪れる客は
どこかに謎や秘密を隠していて、
その大切なものに
そっと色や光をあたえてくれる工藤さんの言葉。

「ラストマティーニ」「背表紙の友」が個人的には好きです。

潔さや、心が温かくなるようなお話です。

香菜里屋の屋号の由来や、
工藤さんの過去に触れている部分もあり
お客さんの謎だけでは終わらない今作。

書き下ろし作品には、
北森さんの別のシリーズで活躍している主人公たちが
登場します。
みんな香菜里屋のお客さんだったのね。
あぁ、
なんて豪華なんでしょ。笑

香月と工藤の会話がなんだかいいんです。

「人生にはビターが必要なんだ。」

「これ以上苦い味を覚えてしまうと、
 人生そのものが歪んでしまいそうで」


ドラフトビールに96度のスピリタスを足しちゃう感じ、
二人の関係が素敵な証拠です。

北森さんがこの世にいらっしゃらない今、
もう香菜里屋の開店はないかもしれませんが
再開を希望して止みません。

文庫化してくれないかなぁ*゜
小さな文庫でそっと自分の手元にあるのが居心地がいい。
そんな感じの作品です。

大好きなシリーズです。
これからも、
大切にしていきたい作品です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 北森鴻
感想投稿日 : 2012年8月16日
読了日 : 2010年9月24日
本棚登録日 : 2012年8月16日

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