ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1996年3月1日発売)
3.78
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本棚登録 : 18997
感想 : 2164
4

新潮文庫100冊から。
一度書店で手に取り、
青春小説なのかな?と思い、
購入しなかったのですが、
YouTuberのベルさんが購入してたのを見て。

表紙とあらすじからイメージしていた青春小説とは、
少し違いました。良い意味で。

時田秀美は勉強はできない。
でも年上の彼女がいる。
そしてクラスの中でも人気がある。
家族は母と祖父。
二人とも我が道を行く破天荒さがあるけれど、
家族としてチームメンバーのような存在。

私は今、
事務職(決められたルールを守る方)にいるから、
真正面から正論や想定外の答えや意見をぶつけられると
反発してしまったり、反感を覚えたり、
(これは自衛の本能なのかもですが)
相手を押さえつけようとしてしまう教師の行動もわかる気がしました。

それでも秀美君が魅力的なのは、
不足部分は不足と認め、
10代という若さで伸び悩んでいる姿が可愛しく、
良い奴だからなのかも。

恋人の桃子さんは、
たぶん秀美君を手放したくないという気持ちがあるんだろうなあと。
だけど執着はしないようにしているというか。

私自身は40を目前に、
高校生よりも秀美の母や桃子さんの立場に近いから
どうしてもそちら側の目線で見てしまいます。
たぶん10代~20代に読んでいたら、
全然違う感想を持ったかもしれないです(悔)

教室という閉鎖された空間で、
教師という圧倒的立場の人間の前で、
ひるむことなく自身の考えを伝えられる秀美には、
何とも言えない気持ちになりました。
格好良いなあ、って。

なんとなく忘れてしまっていた反骨精神とか、
目の前にある出来事を流さず見つめることとか、
本書で思い出した気がします。
良い読書でした…!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 山田 詠美
感想投稿日 : 2023年10月30日
読了日 : 2023年10月12日
本棚登録日 : 2023年10月30日

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