米原さんの本は『うちのめされるようなすごい本』に続いて二冊目だが、本書も正に「すごい本」だと思った。ノンフィクションなのに歴史小説のようでもあり、探偵小説のようでもあり。最後はドキドキしながらページをめくり、夢中で読了した。
舞台は1960年代のプラハと90年代の中・東欧。著者が9歳から14歳までを過ごした在プラハ・ソビエト学校の級友とその家族たち。生まれも育ちも民族も母語も異なるひとりひとりの人間がいきいきと描かれている。マリが旧友と再会する場面はとても感動的だ。
ニュースタイトルとしての記憶しかないプラハの春とワルシャワ条約機構の軍事介入、チャウシェスク政権とルーマニア革命、ユーゴの民族戦争とNATOの空爆といった歴史的な事件がどれだけ人々を翻弄したのかを改めて教えてくれる。ある者は家族と別れ、ある者は亡命を余儀なくされ、ある者は精神に変調を来し、ある者は教え子をかばって処刑される。
その昔「三無主義」という言葉がはやったことがあるが、自分もいかに世界に無関心だったか。もっと若いうちにこんな本を読んでおきたかった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2020年7月17日
- 読了日 : 2020年7月13日
- 本棚登録日 : 2020年7月10日
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