過去の作品に比べ、使われる楽器・エフェクターが多彩であること以上に、本作が基調としているのは反復するリズムが使われていること。故に声を張り上げ、歪みや音量が上がっても同じムードを保つ楽曲からは繰り返すことと同時に、諦念や倦怠感を感じさせるものが多くなった。そしてそこで歌われる歌詞には記憶や思い出といったテーマが増えた。『革命』で歌われた、確かな存在や確信に思えた「君」という存在が広大な宇宙を目の前にしたときの様に何もかもが不確かで理解できないものに思えるような揺らぎに取って代わった。今作ではそれでも続いていく生活・日常に希望や確信がゆっくり蝕まれていくようなフィーリングがある。最もロマンティックであり、コードが反復する曲としては「オレンジトレイン」の系譜でもある「優花」は一つの最たる例かもしれない。以前から度々歌われてきた、夕暮れ時・黄昏時が描かれるのも、原風景と刹那を同時に想起させる。
彼らの音楽には常々葛藤があり、現実の冷酷さを直視しながらそれに対峙するかのように大きな望みや理想があった。このアルバムでもそれは変わらないという点でAndymoriはAndymoriだった。そんな彼らの希望が生活に覆われる寸前にみた最後の景色が本作に思えてならない。
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- 感想投稿日 : 2016年12月8日
- 読了日 : 2016年12月8日
- 本棚登録日 : 2016年12月5日
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