チャリング・クロス街84番地: 書物を愛する人のための本 (中公文庫 M 252)

著者 :
制作 : ヘレーン・ハンフ 
  • 中央公論新社 (1984年10月10日発売)
3.98
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本棚登録 : 739
感想 : 100
4

最初の数ページを読んだだけですぐに引き込まれました。
翻訳されている日本語の美しさ、ユーモアたっぷりの
手紙のやりとりはたまらなく魅力的で、本当に良い本と
出会えて良かったなぁと、読み終わったあとは、
胸にジーンときました。

書簡小説となっていますが、実話に基づいており、
本当の手紙と同じ文面であることは疑いないので
ほぼノンフィクション。
ニューヨークに住む本好きの女性とロンドンの古書店の
人々とのやりとりは、毎回こんな素敵な手紙を書いてみたい!
と思わせるものばかり。
どうしてこんなに楽しいのでしょう。

それに書物の魅力とは中身だけではないことも
教えてくれます。
古書の匂い、表紙のデザインや手触り、
紙の感触に至るまで、大切にされてきた古い本の魅力や
美しさが伝わってきます。
本の注文から派生して人との関わりが見えてくると
いっそう手紙は面白くなっていきます。

1950年代〜1960年代の話なのですが、
第二次大戦後のイギリスでも食べ物は配給制だった
という事実に驚かされました。
主人公が古書店の人たちにハムや卵を送るという場面が
たびたび出てきて、ニューヨークからロンドンに卵を送るの?と
ちょっとびっくりします。
乾燥卵というものがあるらしいのです。
それを使ってお菓子を作ったと書いてあるのですが、
一体どんなものなんでしょう?
そんな当時の生活についても興味深い発見がちらほら。

しかし何よりも、登場人物たちの、特に著者(主人公)の
ヘレン・ハンフと実在した古書店マークス社の
フランク・ドエル氏の飾らない人柄が本当に良くて、
読んでいて幸せな気持ちになります。

実はこの本は友人がずいぶん前に薦めてくれたものでした。
”これから読みたい本リスト”に加えてあったものの、
なかなか本屋さんで見かけることはありませんでした。
最近になって近所に雰囲気のよい古本屋ができましたので
行ってみるとこの本に目が吸い寄せられました。
初めて入った古本屋さんで買った本が
『チャリング・クロス街84番地』だなんて
少しばかり運命を感じてしまいます。
そんなこともあり、ワクワク二倍増しだったかもしれません。

それにしても、なんて豊かな気持ちにさせてくれる
本だったことでしょう!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年8月5日
読了日 : 2020年8月4日
本棚登録日 : 2020年8月5日

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