Landreaall 1 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

著者 :
  • 一迅社 (2003年3月26日発売)
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感想 : 132

女性の、女性による、人民のためのファンタジー<br /><br />おそらく女性の描いた本格ファンタジー漫画では最高品質のもののひとつではないだろうか。良い意味で女性を感じさせる良作である。現在所持している四巻まで一気に読んでしまった。<br /><br />ではどこが女性らしいのか。三つある。<br /><br />まず、筆致。キャラ絵は安定しているが、描線がおおざっぱで画面が白っぽい。作者の出自は知らないが、いわゆる同人っぽい絵である。トーンを使わないのと、カメラワークがあまり上手くないために、若干アクションが見づらいが、それもご愛嬌。アクションの描ける女性作家は少ない。彼女たちはそれを補うものがあるから、成功しているのだ。<br /><br />二つ目は、台詞回し。<br />登場人物たちは、頭の回転が速く、ひとつふたつ先を読んだ会話をする。段階を踏まないため、正直に言ってわかりづらいが、演出としては味があっていい(筆者は富野信者)。その台詞自体も、少々狙いすぎている感はあるが、センスを感じさせる。やはり女性作家は人間関係の作劇が男性より断然上手い。<br /><br />三つ目。<br />スケールが小さい。この作品は本格ファンタジーにも関わらず、登場人物が異様に少ない。メインで登場するのは、主人公とその妹、従者、そして王女の四人だけである。さらに舞台も狭い。四巻まででいっても世界設定の説明はほとんどなく、主人公と歌う樹のストーリーに終始する。世界観をまるで感じさせない。主人公が街を出る決意をするのが4巻であることを言えば、その狭苦しさがおわかりいただけるだろう。こういったある意味狭窄な展開も、目に見える範囲で生きるリアリストである女性ならでは。その分人間描写、会話劇はものすごく巧みである。<br /><br /><br />以上、とにかくあらゆる意味で女性的なファンタジーである。一長一短あるが、ハマればこれ以上のファンタジーはないかもしれない。そういう作品である。<br /><br />早く先を買わなければ。。。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2009年11月6日
読了日 : 2009年11月11日
本棚登録日 : 2009年11月6日

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