中国四大奇書のひとつにあげられる、北宋末期・徽宗皇帝時代の英雄豪傑譚『水滸伝』。
それを「分かりやすく・おもしろく語り直す」という狙いで書かれた陳舜臣の作品。ですが…。
端的に言って、駄作です。
確かに108人の義士たちを余すところなく書こうとすれば、400ページかそこらでまとめることなど、ハナから無理な話です。と言って、九紋竜・史進や豹子頭・林冲、青面獣・楊志など、一部の好漢だけを抜き出して書くとバランスが悪くなってしまいますし。
となると、どうしても洪大尉が伏魔殿の封印を解くくだりから梁山泊108傑揃い踏みまでのあらすじをササッとなぞるだけの文章になり、案の定、ひたすら単調な内容に終始してしまっています。話のアクセントがまったくないのです。
僕の場合は、横山光輝さんの漫画や光栄(KOEI)のゲームで登場人物の人となりなどを知っていたので、本作品をすらすらと読めましたが、何の予備知識もない人が読むと、次から次に人物が出てきて、誰がどこで何をやったのかなど大混乱するかと思います。
つまり、この本で『水滸伝』を勉強しよう・入門しようという人は、おそらく挫折します。横山光輝さんの漫画を読んだほうが、ずっと分かりやすくて丁寧です。
救いがあるとすれば、北宋末期の(まさしく末期症状にあった)政治体制や官職などの説明が多少、ていねいに書いてあることでしょうか。とはいえ、やはり駄作であることには変わりなし。
いったい、この本は誰をターゲットにして書いたのでしょうか?
- 感想投稿日 : 2013年7月25日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2013年7月25日
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