著者一年半ぶりの作品。以前よりずっと巧くなっていてびっくり。
夏目漱石ばりに、句読点の多い紋切り型の短文形式をうまく活用して、若い女性の心理を記していくスタイルが新鮮。新潮社の読書雑誌「yom yom」に連載されていたシリーズの9編を収録。
登場するのは札幌生まれで札幌育ちの生粋の道産子娘、23歳の吉田苑美。実に些細なきっかけで、職場であるデパートの広告の仕事で知り合った40男・エノマタさんを追いかけ始める。
その無謀でむこうみずなことは驚くばかり。ストーカーと化して日夜、彼の後を追いかける日々。日常行動を調べ上げ、立ち回り先までフォローするという徹底ぶり。
そのくせ、具体的にお近づきになるチャンスを作ろうとしない、、、
そんなある日、エノマタさんの勤める広告代理店が倒産。エノマタさんは仕事を求めて、親戚のつてで上京することに。
それを知った吉田は一念発起。仕事を辞めて、彼を追いかけ東京へ。短大時代の同級生・前田は反対するのだが、、、
まあ、とにかく面白い展開。時間を置きながら綴られていく吉田の心境が良く分かる。吉田の一途な心意気に比べて、相手である40男のエノマタさんのはっきりしないこと。現実だったら、ストーカー的行為を重ねていく吉田の姿には怖さを感じる。短大時代の親友・前田のキャラがよい。分別くさく吉田に説教するところなど堂に入ったおじさんぶり。
東京でさまざまな手練他管を弄してお近づきになるものの、前田はエノマタさんとはしっくりこない、、、読み終えて感じたのは、いったいどちらが「とうへんぼくで、ばかったれ」なのかということ。
二人とも十分ばかったれだ。
- 感想投稿日 : 2012年9月23日
- 読了日 : 2012年9月23日
- 本棚登録日 : 2012年9月23日
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