老年を迎えた主人公のアントニー・ウエブスターが、とあるきっかけから過去を振り返る独白として記される。
親友と出会った思い出深い高校時代の頃から、恋に目覚めた60年代の大学生活の思い出までが前半に置かれている。
若さの特権に満ちた輝かしくも苦い青春の思い出話をさりげなく読み飛ばしがちだけれど、この著者はそこかしこの叙述にいくつも地雷を仕掛けている印象。
物語が大きく動くのは、昔の恋人ベロニカの母の死を告げる一通の手紙が届いてからだ。なぜに遺言が彼に届くのか謎が深まるばかり、、、
その後の急展開は、主人公のリアルタイムでの体験と重なっていく。鮮明だったはずの記憶の中の出来事は、突きつけられてくるいくつかの事実によって、次第にぼやけてくる、、、
主人公の困惑は我々にも伝わってくる。なぜならこの独白を読み進めている以上、読み手も主人公と同じ過去に囚われているからだ。事実が判明し始めるあたりのスリリングさは、まるで乗っている椅子ごと振り回される感覚で、遊園地の乗り物に乗っているかのよう。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2013年2月5日
- 読了日 : 2013年2月5日
- 本棚登録日 : 2013年2月5日
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