花宵道中

著者 :
  • 新潮社 (2007年2月21日発売)
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4

「男に惚れる事は死へと向かう事
意地でも死んでなるものか、死んでも惚れてなるのもか…。」
「目を瞑って、愛しい人を胸に思って、他の男に抱かれるんだ…。」

江戸末期の新吉原遊郭にある「山田屋」という
小見世を舞台に綴られた5編の連作短編集。

●『花宵道中』
 遊女朝霧は深川八幡様に行った折、半次郎と出会い恋をしてしまう。
 偶然顔を合わせたのは馴染み客・吉田屋藤衛門の宴席だった。
 初めて愛した男の前で客に抱かれる朝霧…。

●『薄羽蜉蝣』
 初見世を控えた茜には、密かに想いを寄せる男がいた。
 角海老楼の売れっ妓・水連の間男だった…。

●『青花牡丹』
 島原遊郭の大見世の番付女郎・霧里。
 大見世の看板女郎・菫のお客を取った事が原因で吉原に追放されてしまう…。

●『十六夜時雨』
●『雪紐観音』


それぞれ、主人公は異なりますが、読み進むにつれ
各主人公達の関係性がどんどん繋がっていき、
交錯していくので物語に深みが増していきます。

冒頭の季節外れの彼岸花のように寝巻を真っ赤に染めて死んだ
朝霧の姉女郎が誰だったのか…。
阿部屋の半次郎がどうして吉田屋藤衛門を殺さなければならなかったのか。
登場人物達の関係が、次第に紐解かれていく構成は、とても面白かった。

愛する男の前で辱められてしまう朝霧の哀しみ
そして、朝霧は死んだ男の後を追っておはぐろどぶに身を投げた…。
水連は、愛する男と共に生きる事を選び地の果てまでよと足抜けし…。
三津は、ずっと隠してた罪を打ち明けて病で死んだ…。
そんな三人を思い
八津は「あたしは此処で生きて行く」輝くような一言だった。

貧しさ故に親に売られたり、女故に攫われて売られる。
彼女達のあまりに過酷で切ないエピソードに心が痛みました。
でも、儚く残酷な運命の中でそれぞれが自分の道に
花を咲かせ…そして散っていった。
遊女の悲哀・生き様、女性の弱さと強さを切り取り鮮やかに描いています。
でも、とにかく切ないです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説
感想投稿日 : 2016年2月27日
読了日 : 2015年3月1日
本棚登録日 : 2016年2月27日

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