死命

著者 :
  • 文藝春秋 (2012年4月25日発売)
3.49
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感想 : 126
3

★3.5

自分の余命を知った時、ひとりは秘めた欲望を解放し殺人を犯す。
ひとりは刑事としての使命を果たす。
死を恐れぬ罪人に報いを与えられるのかーー。

大学時代に恋人・澄乃を絞め殺しかけ、自分の中に眠る。
全ての女性に向けられた殺人願望に気付く。
若くしてデイトレードで成功しながら、殺人衝動に悩む榊信一。
ある日、余命僅かと宣告され、欲望に忠実に生きる事を決意する。
それは、連続殺人事件の始まりだった。
その頃、元恋人の澄乃との再会。
信一と澄乃は、小学5年生の時新潟の寺泊という港町で、出会った。
お互いに初恋だったが、一年後に信一は寺泊から出て行ったが、大学で再会した二人。
付き合っていた二人だったが澄乃は卒業後故郷に帰って結婚し離婚して東京に戻って来ていた。

都内で起こった連続殺人事件の、犯人逮捕に執念を燃やす刑事・蒼井。
しかし蒼井にも同じ病が襲い掛かり、余命数ヶ月と宣告される。

殺人犯・信一と、恋人の澄乃と、刑事蒼井の視点で物語は進んでゆきます。
序盤は、澄乃が何度も信一を見捨ててしまったと悔いているのはどうして?
信一は、どうして事故で記憶を失い、耳が聞こえなくなった事故って何?
あの光景を思い出してしまうようなことになれば、絶望の中で死んでいくことになるって何?
澄乃が抱えてる、後悔や後ろめたさってなに?
信一は、どうして女性に対して殺人衝動を抱いているの…?
沢山の謎が頭の中で渦巻いて、先が気になって仕方無かった。

自分の余命を知った事で、人を殺したいという昔からの願望を実行した信一と、
命が尽きるまでに、その犯人を逮捕しようとする刑事・蒼井。
残り少ない命を対照的に使うふたりが印象的でした。
そして、死を怖れない殺人鬼・信一。
死にたくない、死を怖れている刑事・蒼井。

信一と蒼井の心理描写は凄まじく、
信一がどうして殺人願望を抱くかわかっても、哀れだとは思いましたが、
理解も出来ないし、共感も出来なかった。
蒼井の最後か安らかなものだったのは、救いでした。

この様な主人公を描いた、著者が凄いとは思いましたが、
うーん、気持ち悪かった(´⌒`。)
一気に読ませる筆力は、流石でしたが…うーん。
生きる事や生き方について、考えさせられました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2016年3月17日
読了日 : 2016年3月17日
本棚登録日 : 2016年3月10日

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