ここに出てくる宇宙人のフェイクですらない存在感。一周して逆にヒリヒリするとか、そういうことでもない。
ただそこにいることで、確実にその背景を支配してしまう存在でありながら、自覚もないし、主体性もない。登場シーンの段取りの悪さは、むしろ信頼に足るほど。
僕は、作品と現実を対応させて読むという旧来の読書スタイルやリアリティに、読み手として、もうすでに無理を感じているところが大きい。
スカした言い方をすれば、それはつまり、「ポストモダン以降の文学の前提」であり、この作品では、「宇宙人の記者会見」がその役割を担っていたと思う。
そしてとにかく主人公の思考が些末。ここに共感を覚えずにはおれない。
併録の、『ウンコに代わる次世代排泄物ファナモ』では、女性目線で語られる自意識の現代バージョンに、細部でたくさん笑わせてもらった。
八つ当たり的に、「転べ!」と念じるところなんて、もうなんかその気持ちが分かりすぎてカタルシスを得た。
大災害のあったその日に株価の話をしている人間がたくさんいるような世界で、唯一の救いとなるリアリティとは、こういうものだ。
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- 感想投稿日 : 2012年3月5日
- 本棚登録日 : 2012年2月16日
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