里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川新書)

  • KADOKAWA (2013年7月11日発売)
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お金の循環が全てを決するという前提の「マネー資本主義」に対して、身近にある資源活用に着目し、お金がなくても水・食料・燃料が手に入る仕組み「里山資本主義」を提唱する。NHKのドキュメンタリー番組を元に書かれた本で、発売から3か月で16万部が売れたとか。

発売されたは2013年。東日本大震災により、都市部での計画停電や物流の脆弱さ、原発への不安といった経験から、お金に頼らない安心安全なエコシステムを作る大切さを説く。当時は東日本大震災であったが、今はコロナや戦争、食糧難など、昨今の情勢に当てはめてもやはり里山資本主義はもっと注目されてしかるべきと思う。

本書で取り上げられていた指標が興味深かった。通常国単位で見る貿易収支を、地方自治体ごとに見る考え方だ。要は地方自治体の中でどれだけ自給できているか、域内で経済を循環できているか。結論としては石油・電気・ガスを買うために多くの金額を域外、ひいては国外に払っており、一番の赤字要因になっている。一方、地下資源に乏しくロシアといった国外からのエネルギーに依存しているオーストリアは、10年も前から危機感を持ってエネルギー自給への転換に取り組んでいるという例は、昨今の情勢を踏まえるとさらに興味深かった。10年前に例として紹介されていた取組や企業を検索しながら読み進めると、時間の経過によって導き出されたとりあえずの「答え」も見えて面白い。

自分自身も結婚を機に昨年東京から地方へ移住し、オットの実家の裏山から持ってきた木で薪ストーブを燃やすようになった。畑仕事を終えて、温泉で話しているおばあちゃんたちは本当に元気だなと思うし、東京では感じられなかった自然のありがたみや季節の移ろいを感じて、非常に充実感を得ている。東京にいたときよりも、断然里山資本主義に近い暮らしをしている点で、力を込めて本書を読んだ。続編も読んでみよう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年11月1日
読了日 : 2022年10月31日
本棚登録日 : 2021年4月26日

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