いい感じにアブナイ表紙が本屋さんの文庫売場にディスプレイされていたのと、つい先日、60年代のアメリカを小道具に使った漫画を読んで気になった場面があったので、ちょこっと手に取りました。
「ビートニク」と呼ばれたムーブメントのアイコンだった、バロウズとギンズバーグの書簡をまとめたもの…といっていいのだろう。2人とも、クィア(まだ「ゲイ」とはいわなかった頃)で詩人でジャンキーという、当時最高にイカシた、あるいは最高に疎まれた人間だし、どういうやり取りかな・・・って、やっぱりそっちですか、はいはいはい。原題が“The Yage Letters Redux”だもんね。至高のアレを求めての南米道中でございます。
読んでいると、2人がやっていることを非難するというよりも、なんだか、「こいつら、アホやな!」という、ある意味の賛辞しか思いつかない。バロウズもギンズバーグも、とりあえず「返事ください」とは書いているものの、たぶん、相手の返事を期待せずに、トリップの延長で延々と手紙を書いている。最高のトリップを求めての南米行きのはずなのに、たどり着く先々でバッドトリップしてゲロゲロ吐き、転げまわってもやめられず、鎮痛剤で苦しさを抑えて次に挑む・・・(以下繰り返し)って、なんだかジャンキーというより、苦行に挑む修行僧のおもむきさえある。しかも2人とも、ムダに高学歴で文才もあるから、支離滅裂であっても面白すぎる。ひょっとすると、これは全部ネタなのか?と思いながら読み進んだ。バロウズは下品さがどぎついけど、言葉のノリがリズミカル。ギンズバーグのほうが、そのへんはちょっと正気が残ってるのか、抑え気味の知的な筆致。彼はたぶん、バロウズのことがめんどくさいんだろうな・・・と思えるふしがあったりして、なんだか笑える。かみ合ってるようでかみ合っていない、2人の相性もうかがえたりした。
モラル的にはむちゃくちゃな作品だとは思うけど、そこにはなんだか可笑しみさえ感じる。中島らもの作品にもそういう部分があったのを思い出したので、この☆の数。作品といえば作品だし、まとまりのない原稿のカタマリといえばそうなので、訳者・山形浩生さんの詳細でシニカルな解説で、全貌をつかんでから読んでもいいかもしれません。
- 感想投稿日 : 2012年8月21日
- 読了日 : 2012年8月21日
- 本棚登録日 : 2012年8月19日
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