職業も年齢も異なる五人の登場人物の手紙のやり取りだけで構成された異色の小説。
今の時代、相手に何かを伝える手段として電話、メール、SNSが多く使われていて、手紙なんてもうその手段として思いつきもしないかもしれない。この小説では登場人物五人の機知に富んでいたり、くすっと笑ってしまうユーモアを含んだ文章によってそんな手紙だけがもつ魅力というのを少し感じることができると思う。これから先、手紙を書くという文化はほとんどなくなっていくのかもしれないけれど、自分はこの小説に出てくるような文章のやり取りをしてみたいと思った。
今回は二十代の登場人物に感情移入をして読んでしまったけれど、また何年後かしてから再読すると別の登場人物に寄り添うようになって、この小説を違った捉え方で楽しめると思う。
各登場人物の手紙の所々に心に響く名言のようなものがあるので、そういうのもぜひ探してみて欲しい。数年経ってから読むと響く箇所が変わったりと面白い発見もありそうだ。
この作品は三島由紀夫の中でも異色な作品だけれど文体としては読みやすいので、すこし昔の文学を読むのに躊躇いがある人にも勧めやすい。ただこの小説のイメージで他の三島作品を読むと面食らってしまうかもしれない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2020年6月21日
- 読了日 : 2020年6月21日
- 本棚登録日 : 2020年6月21日
みんなの感想をみる