アメリカ海兵隊: 非営利型組織の自己革新 (中公新書 1272)

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  • 中央公論新社 (1995年11月25日発売)
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趣味と実益を兼ねて、「自己革新組織」について学ぶため、手に取った。

1-5章は海兵隊の成り立ちや歴戦、その文化や組織構造などを実例を元に解説しており、ここは軍事好きでないと読みつづけるのはツライかもしれない。
6章は組織論考察ということで、「失敗の本質」の解説部分のような章となっている。海兵隊が「最強組織」として存続している考察がここにまとまっており、この章を読むだけでも得るものは多い思う。

学習し続けること、リーダーが「戦略」=「文化と統合のバランス」を正しく行うこと、規律を守らせて小進化を続けること、本質的に変えるべきでないことのために継続的に自組織の機能を変えていくことの必要性、を学んだ。

【以下、気になった部分書き出し】
・士官候補過程(OCC)の目的は、士官候補生にストレスを与えて、いかに挑戦・反応するかを評価し、選別することである。ストレスにうまく対処し、リーダーシップ、知性、強固な人格、耐久力、自発性、共同作業能力(チームワーク)を示したものが少尉任官の資格を得る。(P151)
・海兵隊には、「友軍を見殺しにしない」、「死者を戦場に放置しない」という伝統がある。将校や兵士が危険を犯して死傷者を収容しようとして、自ら死傷した例は数え切れない。死傷しても必ず収容されるという信頼、お互いに骨を拾うという戦友愛は、海兵隊員の連帯意識の支柱となっている。(P162)
・自己革新組織とは、絶えず自ら不安定性を生み出し、そのプロセスの中出新たな事故創造を行い、飛躍的な大進化としての再創造と連続的で漸次的な昇進かを、逐次あるいは同時に行うダイナミックな組織なのである。(P171)
・その要件とは、(1)「存在理由」への問いかけと生存領域(ドメイン)の進化、(2)独自能力-「有機的集中」を可能にする機能配置、(3)「分化」と「統合」の極大化の組織、(4)中核技能の学習と共有、(5)人間=機械系によるインテリジェンス・システム、(6)存在価値の体化である。(P172)
・ドメインとは、組織がどのような領域で環境と相互作用したいかを決める独自ノン生存領域のことである。ドメインの定義は、組織は誰に対して、いかなる能力で、何を提供するのかの基本構想を示すもので、究極的には組織のミッションを明らかにすることである(P172)
・水陸両用作成ンという概念は、海兵隊の過去の経験の延長から生み出せるものではなかった。それは、現状の改善から生まれる小進化ではなく、過去から不連続的に飛躍する大進化のきっかけになった概念である。(P176)
・昇進かとしての洗練は経験的であることが多いが、大進化としての再創造は経験を超える概念で始まることが多いのではなかろうか。(P176)
・その領域での生存に必要な独自能力を開発し、それを他組織との際を強調しながら展開するのが自己革新組織の戦略の要諦である。(P178)
・素子マニュアルのような、組織的に共有可能な形式知も重視するが、質の高い暗黙知がなければ形式知に変換しても底の浅い知にしかならない。イノベーションの源泉は、、機械的な形式知にあるのではなく、人間的な暗黙知にあるのである。(P187)
・基本的な規律の共有も重要である。・・・・・当たり前の基本を確実にやらせる規律も、小心化の持続には極めて重要なのである。
・今日体験は相手の思考プロセスまで暗黙的にわかるので、戦闘行動に不可欠のチームワークの知を涵養するという。(P192)
・海兵隊が、贅肉のない、プロ意識に徹した、いざというときに頼りになる軍事組織でなくなった時には、即消滅するであろう、と(P193)
・いずれも環境の変化を先取する形で主体的に氏名ないしドメインを変革し続けてきた。氏名やドメインは機能的価値と言ってもよい。それは、環境の変化を先見しつつ、何をしたいのかという、必要な機能を希求する価値である。したがって、環境が変化する限り常に変革していかなければならない価値である。(P194)
・組織の持つ価値には、組織が果たすべきドメインや使命などから構成される機能的価値と、組織のセインから全人的関与(コミットメント)を引き出す、なんのために生きるのか、という存在価値がある。前者は環境との相互作用を通じて変革し続けなければならない。しかし、後者はそれを喪失した時に組織が消滅するほど思い込みが強くかつ崇高な不変のものである。
・組織進化論の「進化とは学習なり」という命題によれば、進化の本質とは、新しい情報や知識の学習である。組織は、外部環境へ適応するのに有用な情報や知識を選択・淘汰しながら生存していくというのである。しかしながら、組織の自己革新は学習だけではできない。学習には、絶えず過剰適応の危険が伴うからである。環境的お湯に有用であった知識のみを選択し蓄積していくと、「過去の成功体験への過剰適応」が起こり、新たな環境変化に適応できなくなるのである。(P196)
・知識創造事さが組織の自己革新の本質なのであり、新しい地の想像なくして組織の自己革新はありえないのである。(P196)
・(水陸両用作戦の)概念が作られただけでは、知識創造は完結しない。概念は、それを作った人の思いが言語化されたものであるが、言葉は具現化すなわち結晶化されなければならない。概念は結晶化されるプロセスで、具体的な技術、モノ、サービス、システム等に具現化されると同時に、その具現化に参画した人々に体化されるのである。(P197)
・このような、「思いを言葉に、言葉を形に」のプロセスの中出、知識の獲得・創造、活用・普及・蓄積が一斉に起こり、組織の知識体系が変革されていくのである。(P197)・知識創造はこのような個人の思いや技能という個人地に発するものである。しかしそれが概念化されずに個人知にとどまっている限りは、共有された組織知あるいは普遍的な知には成り得ない。(P198)
・組織の中には、機能的価値は持っていても、「何のために」という存在価値を持たないものも多い。しかし、存在価値があるからこそ、組織の自己革新に向けてここの成員の全人的関与(コミットメント)を誘発できるのである。(P200)
・海兵隊の場合、合衆国への中性や中前の愛といった存在価値が「不易」(変わらないもの)で、前進基地奪取部隊や即応部隊という機能価値が、「流行」(変わり続けるもの)である。実は、自己変革組織における変わらないもの(不易)と変わるもの(流行)は、それぞれが単に独立してアルのではなく、両社は相互に作用しあるのである。(P203)
・すべては変化する。しかし、組織の存在価値が正義、勇気、自由、愛など人間の普遍の価値に近づけば近づくほど、その変化の度合いは低いだろう。不変の存在価値を堅持しつつ機能的価値を革新し続けるのが、自己革新組織である。合衆国海兵隊は、そのような組織の一つの原型を示しているように思う。(P203)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教養
感想投稿日 : 2013年12月31日
読了日 : 2013年12月31日
本棚登録日 : 2013年12月31日

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