鬼哭の島

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2011年7月7日発売)
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感想 : 3

鬼哭とは浮かばれない亡霊が泣くこと、またその声。
著者の江成常夫は戦争花嫁や中国残留孤児、満州など、日本の負の遺産を一貫して追ってきた写真家という。
本書は戦地となった太平洋の15の島々を周り、フィルムに収めた写真集。各島で生き残った戦争体験者の証言も収録されている。

タイトルの「鬼哭」も英語タイトル("The Islands of Silent Cries")の"Silent Cries"も胸に迫る。
南の島の青い空、原色の花々は、天国のように美しい。廃墟や遺骨もさることながら、夢の楽園のような写真が逆に戦争の悲惨さを思わせる。
こんな島がかつては地獄の戦場となり、そして多くの兵士や民間人が命を落としたのか。爆撃や戦火のみならず、飢えや病気で亡くなった人が多かったという。ガダルカナル島などは「飢島」と呼ばれたほど。
現地の写真と併せると、生き残った人の証言がなお一層重く感じられる。

写真の持つ力を感じさせる。

*当時の様子を語る人の話を読むと、つい自分が生き残る側にいるような錯覚を覚えてしまうが、その場にいたらまず間違いなく命を落とす側だったのだろうな、と戦没者の数を見て思う。語られない物語の想像を絶する多さに絶句する。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 戦争
感想投稿日 : 2011年9月14日
読了日 : 2011年9月14日
本棚登録日 : 2011年9月14日

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