芸術の蒐集

  • 東洋書林 (2011年6月1日発売)
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『美の歴史』『醜の歴史』に続く、エーコの芸術史第3巻。
美と醜の枠を飛び越えて、蒐集の大海へと碩学が誘う。

原題は”Vertigine della lista”、「目録の眩暈」もしくは「めくるめく羅列」というような意味であるらしい。
「リスト」が本書のテーマである。書物にしろ、絵画にしろ、数多くのものを描いていても、結局は有限である。『神統記』や『イリアス』の時代から、人間は膨大なリストを以て世界の無限に挑んできた。数え切れないほどの人物たちが描かれた群像画もまた、額縁を超えて広がる宇宙を感じさせる。
視覚的リスト、物のリスト、場所のリスト、脅威のリスト、驚異の部屋(ヴンダーカマー)などのテーマのもとに集められた美術作品や文学作品。
これでもかというほど列挙される羅列の例の洪水には、眩暈を通り越して悪心をもよおすほどだ。この本自体が「リストのリスト」と呼べるものになっている。
博物館やコレクターとも通じる、「網羅したい」という思い、あるいは欲望。圧倒の1冊である。


*個人的には、ちょっと手に余った。自分はあんまり世界を把握したいって欲望がないんだな、きっと。リストというものにそれほどの興味を持てない。

*三部作のうち、自分としては『醜の歴史』が一番おもしろかった。

*第16章「一貫性のある過剰」の中に、エーコ自身の作の抜粋も採られている。前段に弁明があってちょっと微笑ましい。

*前2作に比べて、テキスト引用部分が多いような気がする。基本的には本書の訳者さんが訳されたものらしい。リストが延々と続く、訳に苦労しそうな文章が山ほど。いやもうとにかくその労力に「お疲れさまです」と言いたい。

*創世記の抜粋を呼んでいたら、筒井康隆の『バブリング創世記』を思い出してしまった。もう何年も前に読んだきりなのに。記憶って不思議。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 美術
感想投稿日 : 2011年8月28日
読了日 : 2011年8月28日
本棚登録日 : 2011年6月19日

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