2100年の科学ライフ

  • NHK出版 (2012年9月25日発売)
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感想 : 69
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以前、本書の著者、物理学者ミチオ・カクが司会を務めた未来の科学技術を予想する科学番組シリーズをNHK-BSで放送していて、とても面白く見た
のがあるのだが、本書はいわば、その発展版。取材を元に、2100年までにどのように科学とテクノロジーが進化していくのかを具体的に予測した
一冊。

著者が描き出す未来は希望に満ちているといっていいものだが、完全に薔薇色ではなく、そこにまた制約があることも描き出している。

科学とテクノロジーがいくら発展しようとも、我々が原始から持つ「穴居人の原理」が邪魔する。たとえば、我々はバーチャルなものより
実物に重きを置く。オフィスがIT化すればペーパレスが実現するといわれながら、結局、さらにプリント枚数が増えているという現実がそれを
物語っている。

コンピュータの処理能力が進化していく一方で、ソフトウェアがそれに追い付かないだろうというという指摘には深く頷けた。
著者がいうように、ソフトウェアは、人間がノートと鉛筆を持ちながら1行ずつ書いていくしかないからだ。コードを書く人であれば、
同意してもらえるだろう。

未来における「富」とはなにかという著者の主張も非常に示唆に富んでいる。将来の進路やビジネスを考える一助になるだろう。

著者が本書を書いた理由に、アメリカの若者の科学離れがあるそうだ。全米の大学で物理を教える教授のうち、約半数は移民とのこと。
しかし、日本も決して他人事と傍観できる状況ではないことは周知の事実だ。原書は2009年発刊のため、福島原発事故は本書に含まれていないが、
ポスト311にある今の日本人が読む価値のある本といっていいと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2013年6月2日
読了日 : 2013年6月2日
本棚登録日 : 2013年6月2日

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