小説家による創作論が面白いのは、いわゆる批評用語が用いられていないところ。後藤明生自身が書いていたとおり、批評家による批評と小説家によるそれとは、そこで一線を画す。批評とはある種の暴力だと思う。既存の概念でもって作品をねじ伏せる傾向がある。逆に、小説家による作品論には、ある抽象を目指しながらも、あくまで具体につこうとする姿勢が土台にある。
創作家と批評家がそれぞれ性質の異なる存在だという前提に立つと、批評家は理性的で創作家は本能的といった誤った2分法が生まれる。本書にも登場する田山花袋はその不幸な犠牲者だ。そんな彼を、後藤明生が、精緻な読みで救い出している。それだけでも、本書は読む価値がある。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
エッセイ
- 感想投稿日 : 2014年2月13日
- 読了日 : 2014年2月13日
- 本棚登録日 : 2014年2月13日
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