BLUE [DVD]

監督 : 吉田恵輔 
出演 : 松山ケンイチ  木村文乃  柄本時生 
  • TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
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本棚登録 : 40
感想 : 10
5

この吉田恵輔という監督の作品はたいてい観てるけど、映像で物語る才能にあふれている。
これまでに観たボクシング映画(邦画)のなかで、北野武『キッズリターン』に次ぐ面白さかもしれない。

とあるボクシングジムが舞台の群像ドラマだ。主要人物は3人。どの人もたいして強くないのがいい。本作の物語の主眼は、そのような強さには、ない。

ひとりは、松山ケンイチ演じる瓜田。誰よりもボクシングが好きで長年ジムに通っているけれど、ぜんぜん勝てない。

いまひとりは、東出昌大演じる小川。彼はジムの期待の星だ。次期チャンピオン。しかし、打たれすぎたせいか、記憶障害が出始めているだけでなく、ときどき激しい頭痛などにも悩まされている。

そして新入りの楢崎(柄本時生)。彼は職場のパチンコ屋の同僚の女の子の気を引きたいがためにボクシングを始める。

三者三様、それぞれに勝ちたい理由がある。
小川はチャンピオンになりたいから。
楢崎はモテたいから。
瓜田はただボクシングが好きだから。

が、物語のなかでさまざまな要因が絡んでくるにつれ、それぞれの動機も窯変していく。
けれどもこの小さなジム支える背骨のように変わらずあるのは、瓜田のボクシングへの愛だ。

いつも負けていて後輩から罵倒されてもにこにこ笑って受け流す。そして、自分が勝つことを望んでいるだけでなく、後輩たちが勝つことを誰よりも願っている。そのために懇切丁寧なアドヴァイスまでする。
(ただ、ひとつだけ、そうも言っていられない事態というのが絡んでくるのだけれど。)

小川と楢崎はしだいに、あることをきっかけに姿を消した瓜田から、真の魂の強さとは何かを感じとる。
しかし本作は、凡庸な物語の予定調和からは自由だ。
瓜田から力を得た小川と楢崎は試合で健闘し、勝利を勝ち取る、といった安易な結末には至らない。

おもてむきは勝敗だけがすべてのボクシングの試合を通して、それとは別の何かを描いた作品だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: DVD
感想投稿日 : 2022年2月23日
読了日 : 2022年2月23日
本棚登録日 : 2022年2月23日

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