思想を背景にして描かれた小説は、自叙伝の体を取っていようが、事実を都合よく捻じ曲げ、自らの信教を正当化しようとする。共産主義のイデオロギーは素晴らしくても、それが人間という生命には、実際的ではない。その事を本作が伝えてくれた事をもって、転向小説との評もあるのだろうか。しかし尚、主人公はソ同盟の理想を支えにしようとするのである。
大日本帝国の軍人には多分に暴力的側面があり、物語の残虐シーンは、事実に近いものもあるだろう。しかし、その側面だけを強調し、一方に人間的な過ちを温かく表現しながら、日本サイドのやり方には、全く容赦なしで獣のように描く。そんな小説があっても良い。別にバランスの取れた著作物など、私は求めない。しかし、作者は、巻末の回想的略歴で、中日戦争と、日中逆に記載する。もはや、作為を感じざるを得ない。その点、啓発的要素を含んでしまい、それは新興宗教の胡散臭い口説き文句を想像させるものであり、残念なことである。
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- 感想投稿日 : 2014年11月2日
- 読了日 : 2014年11月2日
- 本棚登録日 : 2014年11月2日
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