本を読む本 (講談社学術文庫)

  • 講談社 (1997年10月9日発売)
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感想 : 718
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「読んだ後に何も残らなかった」
こんな読書を改善するために。

読書の技法について書かれた古典。良い読者になるためには。そもそも、良い読者とは何か。読書に時間をかけた分だけ、知識や体験を得たり、それにのめり込む程の娯楽を味わったり、自らの思想や行動を考え直すような読書ができれば、良い読者と言えそうだ。

4つの読書の方法。初級読書、点検読書、分析読書、シントピカル読書(比較読書)。それぞれを解説してくれる。結論、好きに読めば良いかな…というのが私の感想。理解できない本があり、理解したいと思うなら、おのずと分析読書をするからだ。問題は、理解できない理由だ。著者が悪いのか、読者が悪いのか。この対決は読書における永遠のテーマではないだろうか。

本には、金儲けのために書かれたものもあるし、わざと難解な言葉を用い、読者を欺く作家もいる。酷いのは悪文を理解できたフリをしてマウントを取るような権威主義的な世界、これは読者側著者側、双方に生じ得る。

本文ではないが、外山滋比古氏のあとがきにて、この著者vs読者の対決について少し触れている。私にとってはこちらの方が興味深かった。

ー 若い人が読書をするのは、時間つぶしではなくて、自己を改造しようとしている場合がある。
日本の読書がともすれば求道的になるのは、一つには不必要に難解な文章に耐えなくてはならなかったからだ。一読してすらすら頭に入るようなものは本格的な論文とはみなされない。晦渋であることが評価される。先進文化の優れたものは難解であるべきだ、悪文であっても良いのだと言う錯覚が一般化した。

物理学者アラン・ソーカルによる文系が用いる難解な語句で書いたデタラメなポストモダン風論文、理解出来るはずがないのに、皆が有難がって読んだらしいが。読書家は恥を知り、読書の技法の前に、作法を知るべきだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年8月19日
読了日 : 2023年8月19日
本棚登録日 : 2023年8月18日

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