著者が期待する企業の善行に関しては、株主が先ず変わらねばと思うが、至近、まるでCMスポンサーにクレームをつける輩の如く、株主も企業の倫理観に対して厳しくなった。そのため、企業側もESGの意識が高まってきたのは事実だ。しかし、企業存続にはどうしても利益追求が必須であり、企業側には、単に気にするパラメーターが増えただけ、とも言える。
偽善ではなくとも、風評を気にして対処しなければならない局面もある。また、企業もそれを煽る社会も良かれと思いながら、期待していた成果が得られないケースもある。例えば、インドとパキスタンではアパレル関係の縫製工場から子供の労働者を雇い止めしたが、結果的に子供たちは家計を助けるために売春を始めた。先進国の価値観、距離感で「正義」を語っても、黒カビのように根を張る「悪徳」の根絶にはならない。
新興国に大企業が乗り出すメリットは何だろう。発展までの収益期待、となると随分時間がかかりそうだ。ヨーグルトで有名なダノンフーズは倹約型イノベーションとしてバングラデシュにヨーグルト工場を建設した。工場での雇用創出に加え、販売員、また牛乳そのものも地域のあちこちで細々と経営されている小規模の370以上の農家から集めたらしい。で、栄養不足の現地住民にも購入可能なヨーグルトが提供できる。安価に作って輸出で儲ける打算もあるだろうか。何が本心か分からない程、企業とは、取り繕い、ポジティブワードにフレーミングし、善行をアピールするもの。
車買取の会社が問題を起こしているが、この体裁が失し、悪徳と偽善の使い分けが崩れた企業は脆い。集団で働けば、一人くらい、悪行に手を染めていけず、ゆえに罪悪感が発動するはず。日本の義務教育や家庭教育、監視社会は柔ではないと期待している。
- 感想投稿日 : 2023年7月30日
- 読了日 : 2023年7月30日
- 本棚登録日 : 2023年7月30日
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