一文一文を珠玉のように味わう事ができ、ワクワクするように物語に入り込める数少ない作家が村上春樹だ。小さい頃から彼の文体に馴染み、最近その独特のリズム感を味わう事が減ったのだが、リズム感だけならば、春樹チルドレンと呼ばれるラノベ作家が最近はいるようだ。しかし、村上春樹本人と、チルドレンでは、当然ながらやはり何かが違う。本著は、村上春樹本人による小説論だが、読むと、そのワケがわかるような気がする。
小説家になったきっかけ。物語を作る時のテクニック論。例えば、できるだけ簡単なフレーズの組合せで短く表現する事。初稿は思うがままに書き上げても、そこから繰り返し何度も手直しする事。手直しする事そのものに価値がある事。書き上げたものを、客観的に見るためにも寝かせる事、定点観測として妻の意見を求める事。環境に左右されないために、外国で執筆に臨むこと。凄い、これはまるで芸術家というより、名文を一つ一つ加工する匠だ。
そんな作家の日常や職場風景を覗き見る事ができる。春樹好きはもちろん、文筆家志望、ただの本好きにもオススメである。
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- 感想投稿日 : 2019年1月12日
- 読了日 : 2019年1月12日
- 本棚登録日 : 2019年1月12日
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