20世紀末から21世紀初頭の神戸・ニューヨーク・ベルリンに起こった激動を丹念に追った一冊。引用文献の量は学術的背景を保障しており、加えて都市計画史としても読める。硬質な文章は明快に、そして客観的に都市に関わる人々の動きを描いている。
著者の視点は、「都市計画を社会・政治的に中性の領域の中に位置づける見方は依然として根強く残っている。(中略)しかし、都市における摩擦の力学は”競合の空間”を算出し続け、それへの技術の関与は中性ではあり得ない。」という一文に明快に表出しているように思う。
確かに現実の世界では、都市計画は単なる学問として中性ではありえない以上、様々な登場人物による「競合の空間」が現出する。つまりそれが都市そのものである、ということである。
しかしながら、競合の空間としての都市は、その市場優先主義を背景に弱者を切り捨て、多様性を喪失していく。
著者はあくまで客観的に事実を積み上げているが、そこには明らかに都市空間における多様性の喪失、弱者切り捨て対するエクスキューズを孕んでいるように感じられる。私も同意見。
個人的には神戸で震災に遭い、9.11は会社のTVで崩壊するWTCを観、ベルリンの都市計画には92年のシュプリーボーゲン、93年のシュプレーインゼルのコンペに参加した経験などから思い入れもあり読み進んた。読み応え充分であった。お薦め。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
建築・都市
- 感想投稿日 : 2010年2月27日
- 読了日 : 2010年2月27日
- 本棚登録日 : 2010年2月27日
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