死をポケットに入れて (河出文庫 フ 3-3)

  • 河出書房新社 (2010年8月3日発売)
3.79
  • (57)
  • (65)
  • (100)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 879
感想 : 57
4

 齢70を越えて自ら車を運転して競馬場へ通い、夜にはパソコンに向かって言葉を吐きだし、9匹の猫を飼い、ラジオから流れるクラシック音楽を愛好する。作家。チャールズ・ブコウスキーという生き物…というか生きていた者。
 夜、パソコンに文章を打ち込む。
 新しい一行は私にとっても毎回新たに始めるものだ。
 でも私は生きているし、作家ではないし、クラシック音楽を知らないし、猫を飼っていないし、歳は70に至らず競馬場へも行かない。
 何より私はチャールズ・ブコウスキーではない。

 ブコウスキーは死を左のポケットに入れて持ち歩いていると言った。
 ブコウスキーではない私は、ならば死をどこに入れて持ち歩こうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年1月24日
読了日 : 2013年1月24日
本棚登録日 : 2013年1月24日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする