人口論 (光文社古典新訳文庫 Cマ 1-1)

  • 光文社 (2011年7月12日発売)
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感想 : 27
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マルサスの人口論、名前はダーウィンの進化論関連の本を読んだときに知りましたが、とある事情で今回読んでみました。
シンプルに、新書の一冊という形でまとめられていますが、中は決して単純ではありませんでした。

人間の本能的な衝動による人口の増加は食糧の生産の限界によって生じる貧困によって止められる、そしてそれは収束点を持つようなものである、というのがマルサスの理論であったと感じました。

実例をいくつか引用しつつ社会の成長の有限性を指摘したのは先進的であり、それゆえに未だに名が引用されるのでしょう。しかし人類が社会全体を考えて抑制的な行動、この場合具体的には避妊、をする可能性を否定している点には違和感を感じます。
社会の発展は決して貧困をなくすものではない、という彼の理論は決して貧富の差を肯定するものではないですが、反道徳的であるという印象を招いたのかもしれません。

一方であとがきで知ったのですがマルサス自身は牧師であったそうで、彼自身の宗教観というか死生観のようなものもその一部特異に感じる意見に反映されているのでしょう。
全体的には決して読み辛くなく、フランス革命の真っただ中で書かれたとは思えないほど現代にも通ずる普遍性を持っていると思います。
ここからダーウィンが進化論をまとめ上げる着想を得たというのは実に面白いです。

21世紀の世界を考えるうえで、読んでおきたい一冊と言えます!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会学
感想投稿日 : 2012年7月14日
読了日 : 2012年7月13日
本棚登録日 : 2012年7月3日

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