ミリオンダラー・ベイビー [DVD]

監督 : クリント・イーストウッド 
出演 : クリント・イーストウッド  ヒラリー・スワンク  モーガン・フリーマン 
  • ポニーキャニオン
3.80
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本棚登録 : 2224
感想 : 439
5

クリント・イーストウッド監督。
「許されざる者」と較べてどうかといわれたら、あの作品ほどではないと思いますが。
でも、単なる好みの問題かも知れません。

この映画は、クリント・イーストウッド、モーガン・フリーマン、ヒラリー・スワンクの3人の映画です。
モーガン・フリーマン演じるエディが語る、フランキー(クリント・イーストウッド)とマギ-(ヒラリー・スワンク)の物語という構成です。
エディの視線はあくまでマギーに注がれているので、クリント・イーストウッドは後ろに引いた感じです。

そのモーガン・フリーマンは、とても渋い。
渋くて重たい。
こういう役者による、こういう演技こそ名演というのでしょうか。
ボクシング映画には、やはりこういう人物が必要ですね。
けっして大声でなにかを主張するのではなく、脇にじっと控えているけれども、勝利も敗北も、怒りも哀しみもすべて知り尽くし、しかも、助けるべき時と人が現れたら、それを間違えない老練な黒人。
彼がこの映画の重心だと思います。
もしモーガン・フリーマンの役柄がなかったら、この映画もずいぶん軽い感じになったでしょう。

話はぜんぜん違うけど、日本の俳優では、「いかりや長助」がそういう渋くて重厚感のある演技のできる人だったと思います。
残念ながら亡くなってしまいましたが、彼には一度で良いからこういう種類の映画で、その名演技を見せて欲しかった。なにかのコマーシャルでウッドベースを弾いてたけど、とてもカッコ良かった。

ヒラリー・スワンク。
「マリー・アントワネットの首飾り」と「インソムニア」で観ただけですが、非常に印象に残る女優です。この映画ではボクサーを演じているので、あまりきれいに見えないけど、ほんとは美人です。
美人といっても、口元に特徴ある、癖のある美人ですね。
「マリー・アントワネットの首飾り」でも不幸な生い立ちの貴婦人を演じていましたが、貧乏というか、薄幸というか、ある暗さを持った、それでいて知的で意志的な女性の役がハマリますね。
お金を貯めるために、ウェイトレスをしながら、食べ物を持って帰るシーンは印象的でした。

迫力あるボクシング・シーンは、本場、アメリカの映画だから当然だろうけど、その前後の場面、練習中の風景だとか、試合前の控え室のシーンだとか、そういう部分がこの映画では丁寧に描かれています。

マギーとフランキーはアイルランド系として描かれていますが、それがどういう意味を持つのか。

アイルランド系の人々は、アメリカではまだ貧しい層が多いようです。この映画でも、彼女の母親たちが暮らすトレーラー・ハウスというのが出てきます。これは貧困の象徴らしい。

そこに住んで生活保護を受けている母親とその家族は、とんでもないキャラとして描かれています。でも、身内に大金が入ったときの周りの人間の調子のいいことは、あたりまえといえばあたりまえですね。生活保護とは関係なく、こういう連中はざらにいるんで、たとえば、親を老人ホームに入れたまま生きてる間は一度も来なかったのに、死んだとたん、施設が管理していた貯金をかっさらって行く子供の例なんて、あたりまえすぎて誰も驚きませんから。腹は立ちますけどね。

アイルランド系とカトリックといえば、「アンジェラの灰」という映画を思いだします。

これはもう名画というか、インパクト絶大の超絶貧乏映画で、見おわったとたん本屋に行って「Angela's Ashes」という原作を買ってきて、辞書を引き引き一生懸命読まざるをえなかったほど衝撃を受けた映画でした。

原作者フランク・マコートの半生を描いた自叙伝で、ピュリツアー賞を受賞しました。熱心なファンも多く、「アンジェラの灰」友の会なんていうサイトもあるほどです。むろん翻訳も出ています。

アイルランドという国が被ってきた歴史的な貧しさや、イギリスとの因縁を思い知らされます。本も映画も素晴らしく、感動したい人には、絶対にオススメです。

本作「ミリオンダラー・ベイビー」は、アイルランド人であることが色濃く出ている映画ですが、そういうえばヒラリー・スワンク演じるマギーのガウンは緑色でした。

あれはアイルランド・サポーターの色でしたね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 映画:洋画:アクション・ドラマ
感想投稿日 : 2018年12月23日
読了日 : 2005年6月26日
本棚登録日 : 2018年12月23日

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