わたしは英国王に給仕した (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)

  • 河出書房新社 (2010年10月9日発売)
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本棚登録 : 416
感想 : 51
5

正直、一読目は、世界名作ねぇ
そんなに好きではないかもなどと思ってしまいました。
ところがですね、気づけば二読目 三読目
と、短期間に何度も手に取っている自分がおりまして。
じわじわとボディーブローがきいてくる本です。
お話自体は、第二次大戦を生き延びた、戦地に行かなかった男の一代記となります。
読んでいて、これは男性作家らしい文章だなと思います。
女性の腹の曲線の美しさについて、延々書けるというか、美を感じるって男性ならではの感性というかエロティックな表現ですよね。実際、主人公は女性の腹に花をのせることに執心する様子が書かれています。
小男で如才なく立ち回り、狂気の時代でありながら一財産築き上げ、それを惜しげなく放り出した男の物語。
ユーモアもあれば悲劇もありで、淡々と骨太の文章です。
タイトルは主人公のことでないというのも、ひねりがきいています。
実はこのせりふ、主人公が憧れる上司の決め台詞なのですが、結局この上司のプライドを主人公は刺激してしまい、疎まれてしまいます。
そんな実際にあるような、ないような話。気づけばすっかり引き込まれていて、やっぱり名作だなぁと思いました。
最後の場面が、雪のふる情景なので、寒い季節に読まれると、盛り上がるかもしれません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: レビュー書く予定
感想投稿日 : 2011年11月27日
読了日 : 2011年11月3日
本棚登録日 : 2011年11月3日

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