後三年の役。
藤原(清原)清衡の勃興物語であるが、少数で勝ちを収める展開は、本来ならカタルシス満載のはずだ。
が、余りに出来過ぎ。殊に前半、奥六郡の中の三郡を支配下におさめるまでがそうだ。その上、本巻の人物造形が、清衡に倫理的かつ全面的正義を仮託する如きなので、どうにも上っ面感が拭い去れない。
清原氏に対する復讐心と忍従の日々による心理的成長が齎した清衡自身の謀略戦という展開の方が納得し易いが…。
しかも一巻に全部を盛り込むため全体的に舌足らず。藤原経清の物語と比較して、バランスの悪さは顕著である。
それゆえか、義家や結有の心理変化がト書き的に展開されるのみで、ホントに小説かと目を疑ってしまった。
清衡が奥六郡に覇権を立てようとする上で、彼の心の裡を描くのに、母や疑似父との確執や葛藤は避けて通れない重要な要素と考えるからなのだが…。
ここは台詞や行動、会話で描くべきだったのではないだろうか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2016年12月15日
- 読了日 : 2016年12月15日
- 本棚登録日 : 2016年12月15日
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