日本海軍400時間の証言: 軍令部・参謀たちが語った敗戦 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2014年7月28日発売)
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2014年(底本11年)刊。図書館借本の単行本読破済みで事実上の再読。◆海軍善玉論へのカウンターたる陸海軍五十歩百歩論が開陳された本書。テーマは①海軍の開戦決断、②特攻作戦の立案・実施、③戦後海軍の東京裁判対策の3つ。感想骨子は単行本レビューに。◆本書はTVの制作・取材秘話で、史論として舌足らずな印象は残るが、取材過程の開陳自体、重要かつ意義深いのは言うまでもない。◆再読後の注目点は以下。◇中澤佑軍令部第一部長の戦後の言動とその意味。本書175頁以下(特に190頁)記載の戦後水交社での講演テープの内容。
特攻作戦発案に自らの責任ないことを強調する先の講演録と、同人自身の戦前の業務日誌記載事項(322頁)との明確な齟齬である。全ての自己正当化軍人証言に妥当させるべきでないにしても、証言の信憑性の基礎理論、つまり自己に不利な内容の証言はしない点。特に責任を問われ、又は第三者から批判される危険のあるものは隠蔽・捏造されることを地で行くものだ。本書は実に良い教訓・実例を開示してくれたものである。◇「永遠の0」に代表される特攻「隊員」だけに焦点をあわせた文学が特攻の何物も切り取っていないこと。
◇中国の三灶島(サンソウトウ)事件につき、ある程度の状況証拠が集まり、日本軍の住民虐殺の「可能性がある」程度の帰結は許容できそうな内容なのに、結論は慎重に「虐殺があったか否かも…全体像を明らかにすることは出来なかった」と小括。ここから伺えるのは、同局や現場担当の左巻き偏頗性など微塵も感じさせない点だ(記者の性格と大井氏遺族への配慮も伺えるが…。まあ、元来は全然左巻きじゃないし)。種々の意味で安易なレッテル貼りの問題を想起。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年1月24日
読了日 : 2017年1月24日
本棚登録日 : 2017年1月24日

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