2001年刊。著者は元スウェーデン大使館員、元東海大学教授。◆ビターなスウェーデン論。福祉大国・平和中立国というイメージで語られがちな北欧の雄スウェーデン(尤も、個人的にはそれだけの国と思っていない)。しかし、著者はその内実を暴き、①福祉先進国に程遠く、②ミドルパワー国として、弱者の戦略・外交(欺瞞・狡猾・融通無碍・屈服・面従腹背)を駆使し、国家の存立と平和を図ってきた事実を切り取る。余りに露悪的・侮蔑的な叙述と、反面の日本って良い国、という根拠のない自賛が鼻につくが、瑞典史、特に近代史の叙述は良。
◇また、瑞典内部の問題点の指摘は具体的で、成程と思うことも多い。◆しかし、どの国にも問題と長所があることは明らかで、それを殊更自慢げに上から目線で開陳されても、という印象は残る。また、紹介される他国の制度をいかに取り入れるかは、その国の文化だけに左右されるものではない。普遍性や問題意識の共通性という分析視座が必ずある。文化が違えばその制度が導入できないとするが如き本書の物言いは、思考停止の最たるもので全く共感できないのだ。
むしろ、予算・機能面・日本の長所を踏まえた部分導入とその範囲を緻密に検討していくべきで、北欧なんて信用ならないの如き本書の主張は、本書が批判する北欧バラ色と五十歩百歩なのである。◇また、こういう著者ほど、米国の経済制度は日本に導入できるというダブルスタンダードを用いがち、と見るのは穿ちすぎだろうか。◆本書の主張部分は話半分、瑞典史・現在の瑞典の問題点など事実の指摘は良と見るべき書か。
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- 感想投稿日 : 2017年1月24日
- 読了日 : 2017年1月24日
- 本棚登録日 : 2017年1月24日
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