福祉国家の闘い―スウェーデンからの教訓 (中公新書)

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著者 : 武田龍夫
  • 中央公論新社 (2001年2月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121015754

福祉国家の闘い―スウェーデンからの教訓 (中公新書)の感想・レビュー・書評

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  • 2001年刊。著者は元スウェーデン大使館員、元東海大学教授。◆ビターなスウェーデン論。福祉大国・平和中立国というイメージで語られがちな北欧の雄スウェーデン(尤も、個人的にはそれだけの国と思っていない)。しかし、著者はその内実を暴き、①福祉先進国に程遠く、②ミドルパワー国として、弱者の戦略・外交(欺瞞・狡猾・融通無碍・屈服・面従腹背)を駆使し、国家の存立と平和を図ってきた事実を切り取る。余りに露悪的・侮蔑的な叙述と、反面の日本って良い国、という根拠のない自賛が鼻につくが、瑞典史、特に近代史の叙述は良。
    ◇また、瑞典内部の問題点の指摘は具体的で、成程と思うことも多い。◆しかし、どの国にも問題と長所があることは明らかで、それを殊更自慢げに上から目線で開陳されても、という印象は残る。また、紹介される他国の制度をいかに取り入れるかは、その国の文化だけに左右されるものではない。普遍性や問題意識の共通性という分析視座が必ずある。文化が違えばその制度が導入できないとするが如き本書の物言いは、思考停止の最たるもので全く共感できないのだ。
    むしろ、予算・機能面・日本の長所を踏まえた部分導入とその範囲を緻密に検討していくべきで、北欧なんて信用ならないの如き本書の主張は、本書が批判する北欧バラ色と五十歩百歩なのである。◇また、こういう著者ほど、米国の経済制度は日本に導入できるというダブルスタンダードを用いがち、と見るのは穿ちすぎだろうか。◆本書の主張部分は話半分、瑞典史・現在の瑞典の問題点など事実の指摘は良と見るべき書か。

  •  著者が日本人のスウェーデンに対する幻想を打ち砕こうとして書いたのだろうという意欲がうかがえる。しかしそれでも、普段自分の国のことを悪く言ってばかりの日本人からすると、実は照れ隠しであって本当はスウェーデンのことが大好きなのではないかと思われてしまうし、実際そうなのではないかと思う。だからこそ、悪い面は悪いと実証的に示すことが重要である。本書は著者の豊かな教養に裏打ちされていて、読んでいてとても面白い上、できるだけ公式のデータを用いてスウェーデンの実相を明らかにしようという努力が認められる。しかし、著者の個人的な経験や知人からの伝聞によっている部分も少なくない。そうしたことでしか示せない生活の実態も確かにあるが、やや印象論ともとれるところもあった。そして何より、著者のスウェーデン好きが災いしてしまって、この程度では日本人のスウェーデン幻想は破れそうにない。

  • チェック項目11箇所。「お爺さんの一生で何がもっとも重要な変化でした?」、老人の回答は彼の予想もしないものだった、「それはね――家族の崩壊だよ」。昔の大家族は老人や病人や、職のない家族員のために経済的面倒も見てきた、誰かが病気になっても失業しても、家族が面倒を見てきた、この各世代同居の家族が工業化とともに分裂したとき、人々は老人たちの生活を別なやり方で見てやらねばならなくなった、女性たちは家の外で働くようになり、生産に寄与するようになったが、その家での仕事が消えたわけではない、それは誰かほかの人々、つまり公的機関が引き受けねばならなくなった。「もっと働いて貯蓄せねばならない。そのためには刺激が必要だ。市場経済ではムチと人参が必要だ」(経済学者メイエルソン)スウェーデン型福祉が行き詰まった原因はなにかということだが、簡単に言えば経済成長なくして福祉もないということである。近年は親族が介護を負担することを求められており、そのための報奨金も出るようになった、ボランティアはほとんどいない。重い税金で老人福祉を実現してはいる、だがそれは人間連帯の精神からというよりは、それで自分の連帯責任は解除されたという心理を表現しているということだ。個人主義とは一人で死ぬことの覚悟だということであった、だが日本人は、家族に見守られて死ぬことへの執着にとらわれている。どんな立派な社会を造り上げても必ず少数の脱落者、弾き出される人々を防止できないのである、しかもそれを自らの意思で選ぶ人々もいるのだ、人間とはそれほどに難しい存在なのである。

  • 日本人が描くような美しいスウェーデンではなく、裏側の部分にも焦点を当てたもの。
    福祉制度の充実は優しさによるものではない、というところをスウェーデン人の個人主義の性格をかんがみて少し理解することが出来ました。家庭って軽視できないなと思ったし、単純に日本の福祉もスウェーデンを真似るのはまずいと思った。
    あと男女平等が世界一進んでる、ということだけど平等の意味を考えないといけない。
    単純に同じことが出来て同じ能力をもつことを目指す社会は、結局不満をなくすことができないんじゃないかと。男女それぞれの得意不得意などの特性を考えないといけないと思う。

  • こんな難しいタイトルの本に興味を持ったのは、先ごろ読んだ『ミレニアム』三部作の影響。

    『ミレニアム』で舞台となったスウェーデンという国は「北欧」「福祉国家」というイメージくらいしか浮かばない遠い国。

    著者はスウェーデンやデンマークの大使館に勤務し、北欧と縁深い人物。
    世界史が全くダメだった私には歴史的な話題はちょっと難しかったけど、スウェーデンの福祉や長い歴史、隣国ノルウェーやデンマーク、フィンランドとのなかなか複雑な付き合い、果てはスウェーデン女性の強さや美しさまで話題は多岐にわたり、わかりやすく、最後まで興味を持って読めました。

  • スウェーデンが福祉国家になり得た背景と、現状(10年前)について詳細に書かれていて、読みやすかった。
    ただ、タイトルから勝手に福祉国家の具体的な話だと思ったので背景説明に終始してたのには驚いた。
    あと、最後の方にスウェーデンと日本の強姦の件数の話が出てきたけど、強姦の定義とかどれほどで、立件され計算に入れられている件数が果たして日本のものが適切なのか、ってことを考慮に入れると、文中で強調していたのはどうなのかなと思いました。

  • [ 内容 ]
    福祉の肥大化と官僚化がエスカレートし、試練にさらされる「モデル国家」スウェーデン。
    経済の停滞を契機として、福祉政策の行き詰まりが顕著となってきた。
    少子高齢化や家庭の崩壊といった社会問題も深刻だ。
    だが、日本型福祉の今後を模索するうえでスウェーデンの試行錯誤は大いに参考となる。
    この国が実現した平等と豊かさから学ぶべき点も少なくない。
    これまで語られなかったスウェーデンの実像に迫るレポート。

    [ 目次 ]
    第1章 スウェーデン人における人間の研究―日本人との相似と違い(無口な人々 強烈な個人主義 ほか)
    第2章 福祉社会の裏側―その光と影(福祉国家の素顔 福祉の行き詰まり ほか)
    第3章 北欧に王国ありて―中立外交180年(ナポレオン麾下の将軍、スウェーデン国王となる 開かれた王家の人々 ほか)
    第4章 モデル国家の裏通り―青ざめた花々(自殺の問題 スウェーデン式犯罪―浜の真砂は尽きるとも ほか)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • スウェーデンを含む北欧がなぜ福祉国家として世界的に評価されることになったか。その福祉システムの背景には、どのような明と暗があったのか。筆者は外交官としても現代の北欧に社会について、幅広い知識を我々読者に与えてくれる。少し説明すると、福祉と経済、そして我々の心理というものは実に密接に関わっているのである。介護医療の現場における心理、例えば介護疲れなんてものがあるだろう。では、「介護される」側にはそうした心理は展開していないのか。また福祉を拡張することによって国家における経済はどう変わって行くのか。それを考えさせられる本である。

  • ・スウェーデン人:合理的指向,自然賛美,無口
    ・経済停滞による福祉の崩壊
    ・日本を遙かに超える犯罪率
    ・家族の崩壊

    日本ではスウェーデンを福祉のモデル国家として礼讃する傾向が強い
    →1.福祉が崩壊している現実をまず知るべき
     2.日本とスウェーデンの文化の違いを知るべき
      -スウェーデンは個人主義
      -日本は集団主義
     安易に重税による福祉制度に走らず,日本の文化にあった福祉制度(Ex.家族による介護の補助)を考える必要があるのでは.

  • 武田さんその1
    福祉についてのアレコレ。

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福祉国家の闘い―スウェーデンからの教訓 (中公新書)の作品紹介

福祉の肥大化と官僚化がエスカレートし、試練にさらされる「モデル国家」スウェーデン。経済の停滞を契機として、福祉政策の行き詰まりが顕著となってきた。少子高齢化や家庭の崩壊といった社会問題も深刻だ。だが、日本型福祉の今後を模索するうえでスウェーデンの試行錯誤は大いに参考となる。この国が実現した平等と豊かさから学ぶべき点も少なくない。これまで語られなかったスウェーデンの実像に迫るレポート。

福祉国家の闘い―スウェーデンからの教訓 (中公新書)はこんな本です

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