強欲資本主義 ウォール街の自爆 (文春新書 663)

著者 :
  • 文藝春秋 (2008年10月17日発売)
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2008年刊行。投資アドバイザー業たる著者(邦銀国際金融部門・ゴールドマンサックス勤務歴あり)が、リーマンショック前後の米国投資銀行の実情を明らかにするもの。手前味噌的なところはご愛嬌だが、内容は深い。また、簡明ながら含蓄ある表現も多い。特に、第7章は、著者の思いがストレートに述べられており、共感するところは大。以下、個人的に共感した表現を引用。「日本人がものづくりを忘れて、金融事業に没頭するのは、…日本人であることをやめるに等しい愚案」「私は…ウォール街的な考え方を…日本に持ち込むことには批判的だ。」
「日本人は、…心で感じ、自らの頭で考え、…相応しい金融システムを構築すべき」「本物の清張は真の技術革新からしか産まれない」「それ(技術革新が産まれていないこと)を借金による浪費でカバーしようとするのは根本的に間違い」「超過利潤はいつか必ず何らかの形で吐き出させられることになる…。本件(リーマンショック)しかり、日本の消費者金融の過払い金返還しかり」。
なお、アメリカの牧師が自分が教誨した信者に対して、住宅ローンの斡旋を行い、手数料をもらっていたこと(「モーゲージ・ブローカー」)には驚かされる一方、ジョージ・ソロスが委託するファンドマネージャーにリコース(損失の全額返済特約)の条件を付す点は、なんと周到なことよと思わせられた。また、長銀のリップル売却にあたり瑕疵担保条項を付してしまったことについては、徹底的な事情解明と責任追及が必要だが、誰もそんなことはしないんでしょうねぇ

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年1月14日
読了日 : 2017年1月14日
本棚登録日 : 2017年1月14日

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