2009年刊行。
著者は東京大学大学院教育学研究科教授。
教育、中でも後期中等教育や高等教育が、その後の就業において如何なる意義を有しているか、如何なる効能を持ち得る、そして現に持っているのか?。また問題点はないか、あるとすればその対策は?。
この問題意識は、教育の役割と機能と深く関わるものでありつつ、政権の思惑や国々の史的変遷・経済状況などにも関わってくる。
本書は戦後高度成長期に妥当した教育と労働環境との接続性は回復不可能であることを所与の前提として、近代初期からの史的比較、諸外国との比較、他説への反論。これらを踏まえて現代の問題点と処方箋を解説する。
処方箋の結論を言うと、専門高校の量的拡充に帰着するという何ともガックリくるレベルであり、現実の専門高校がその機能を果たしていないこと、それゆえに公的教育機関から外れた専門学校(〇原簿記云々や〇調理師云々)が、就職予備校的な機能を有する現実を等閑視していて、「流石」東大の先生と哀しくなってきてしまうほど。
もとより、史的展開、諸外国と比較はまあまあなのだが、ただ本書である必然はない。教育史・比較労働経済の書を紐解けばもっと詳しく知りうることもできそうな気が…。
現実との接続性を重視するなら、
➀ 卒業後10年内くらいの卒業生がカリキュラム・アドバイザーとして、当該高校の具体的カリキュラム策定に参画できる、
➁ 資格試験にも対応可能な授業を、通常カリキュラムに加えて展開できるか
とは思う。
その一方で、これは職業的「適応」の極北であり、著者がもう一方の価値として重視する、違法不当な現実職場への「抵抗」の極小化を齎すだろうなとの危惧も大いに沸きあがる。
はてさてどうしたものかなぁ…。
- 感想投稿日 : 2017年1月12日
- 読了日 : 2009年9月19日
- 本棚登録日 : 2017年1月12日
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